六本木・GOSHIKI roppongi 彼の地への恋文。

22/07/2013東京,港区/品川区/大田区

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ある日の晩、打ち合わせの帰り道。
雨雲に覆われたようなモヤモヤした気持ちを、
スカッとさせるために、六本木のあるお店に入りました。
お出迎えは川越の地ビール・COEDOの生。
五種類のラインナップが、フィッシュアンドチップスと共に待っていました。
打ち合わせのお題は青森のこと。
自分も含めて、他県で生まれ育った人間が、
他所の地域を愛するきっかけは、
色々あるものです。
自分にとっては食べ物ですが、
例えば風景だったり人だったり。
出会いで生まれ、稲妻のごとく駆け抜ける第一印象から、
恋は芽吹き愛に姿を変えていきます。
同じ地域を愛する人同士が都内で集まる時、
彼の地で生まれたものを食しながら、
言葉でラブレターを綴る。
好きな地のことを語るとき、
人は無意識に作家になっているものです。
そして、ペンを走らせる原稿用紙になってくれるお店が必要です。
ただ、ペンと紙の相性もあるもので、
大抵、筆が動かないのは、紙との相性が良くなかったとき。
インクが足りないからではなく、
むしろ、真っ白であってほしい原稿用紙が語りだしてしまい、
たっぷりと充填されたインクが駆け抜ける場所が見つからず、
想いが言葉にならないことが多いものです。


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フィッシュアンドチップスのあとに注文した、
ホタテとバジルペーストのパスタ。
もしかして…と思い、お店の方に伺うと、
ホタテは青森産とのこと。
美味しい素材が美しく化粧され、
自然な微笑みを浮かべる姿を見ると、
恋愛と地域愛は、基本的に同じものと感じます。
あなたが好きではなく、
あなたが好きな自分が好き。
恋に恋するのと同じで、
地域に恋する理由が自分のためという気持ちが大きければ、
恋愛と同じで深い関係にはなり得ません。
愛してるという言葉が、
時に便利な仮面になるのと同じで、
美辞麗句が記されただけの原稿用紙は、
文字が多いほど空しいものです。
真っ白な原稿用紙の寡黙な主張が、
普通の文章をかけがえのない名文にしてくれます。
そして、そんなペンの想いを受け止めてくれる原稿用紙を探すことが、
東京でラブレターを書くのに一番必要なのかもしれません。

著者プロフィール

takapu

ごはんフォトグラファー/Local-Fooddesign代表
食にまつわる各種コンテンツ制作(フォトグラファー、エディター、フードライター、インタビュー)、商品開発・リニューアル提案、PRツール・ロゴ制作などを手掛けます。
創業75年以上の老舗食堂を紹介するウェブサイト百年食堂の制作・運営もしています。
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Posted by takapu