六本木・GOSHIKI roppongi 彼の地への恋文。
ある日の晩、打ち合わせの帰り道。
雨雲に覆われたようなモヤモヤした気持ちを、
スカッとさせるために、六本木のあるお店に入りました。
お出迎えは川越の地ビール・COEDOの生。
五種類のラインナップが、フィッシュアンドチップスと共に待っていました。
打ち合わせのお題は青森のこと。
自分も含めて、他県で生まれ育った人間が、
他所の地域を愛するきっかけは、
色々あるものです。
自分にとっては食べ物ですが、
例えば風景だったり人だったり。
出会いで生まれ、稲妻のごとく駆け抜ける第一印象から、
恋は芽吹き愛に姿を変えていきます。
同じ地域を愛する人同士が都内で集まる時、
彼の地で生まれたものを食しながら、
言葉でラブレターを綴る。
好きな地のことを語るとき、
人は無意識に作家になっているものです。
そして、ペンを走らせる原稿用紙になってくれるお店が必要です。
ただ、ペンと紙の相性もあるもので、
大抵、筆が動かないのは、紙との相性が良くなかったとき。
インクが足りないからではなく、
むしろ、真っ白であってほしい原稿用紙が語りだしてしまい、
たっぷりと充填されたインクが駆け抜ける場所が見つからず、
想いが言葉にならないことが多いものです。
フィッシュアンドチップスのあとに注文した、
ホタテとバジルペーストのパスタ。
もしかして…と思い、お店の方に伺うと、
ホタテは青森産とのこと。
美味しい素材が美しく化粧され、
自然な微笑みを浮かべる姿を見ると、
恋愛と地域愛は、基本的に同じものと感じます。
あなたが好きではなく、
あなたが好きな自分が好き。
恋に恋するのと同じで、
地域に恋する理由が自分のためという気持ちが大きければ、
恋愛と同じで深い関係にはなり得ません。
愛してるという言葉が、
時に便利な仮面になるのと同じで、
美辞麗句が記されただけの原稿用紙は、
文字が多いほど空しいものです。
真っ白な原稿用紙の寡黙な主張が、
普通の文章をかけがえのない名文にしてくれます。
そして、そんなペンの想いを受け止めてくれる原稿用紙を探すことが、
東京でラブレターを書くのに一番必要なのかもしれません。