バンクーバーオリンピック・カーリング日本代表決定戦
青森に来て、自分がカーリング体験をしたのは一度きり。
その時に身体の硬さや体幹の未熟さ、あるいは筋力の無さを痛感した。テレビやスポーツ会館でカーリングを見ていると、プレイヤーは軽快に氷上を動いているものの、これほど見た目と実際とのギャップが大きいスポーツはないと思う。
そんなスポーツのオリンピック・日本代表決定戦。戦うのはチーム青森とチーム長野。第一試合の動きを日刊スポーツの速報やらツイッターやらで追いかけつつ、第二試合の入場整理券の列に並ぶ。基本、行列をあまり好まない青森県内で、この光景にお目にかかるのは珍しい。
整理券を手にし、さらなる行列に加わって、自分が席を確保したのはチーム長野の応援団近く。この時点で、時計は正午ちょっと過ぎのこと。
試合開始まであと約10分、チーム長野⇒チーム青森という順番で、選手たちがアイスに出て練習を始めた。
アイスコンディションが、刻一刻と生き物のように変化するというのが、カーリングというスポーツの面白いところ。単に、氷の上を石を滑らせればいいなんてものじゃなく、石が滑りやすいかどうかという、相性のようなアイスコンディションを知ることが、試合を制する上での必須条件。
試合が始まると、主導権を握ったのはチーム青森。
実は、対戦相手のチーム長野は、木曜日からチーム青森との対戦権をかけて、北海道の常呂高校チームと3試合方式で、すでに試合をしているのであった。2連勝していれば身体の負担も少なく、心理的な負担も少なかったはずだが、3試合まで持ち込まれての勝利。
そして、この日も朝8時からチーム青森と第1試合を戦い、延長戦の末に敗れてしまった。
つまり、5試合目となる。しかも、第1試合を落としてしまい、もう後がない状況。(チーム青森は、日本選手権を連覇しており、その分アドバンテージがあった。)きっと、見ている側には推測できないぐらい大きなものを背負っていたに違いない。
カメラのレンズが一瞬を捉え、一瞬ができるまでにはその何倍もの時間が費やされる。そうじゃないと、こんなプレッシャーの中で集中力を持ち続けるなんてできない。
エンド(野球で言う○回)が進むにつれて、得点差は開いていく。地の利や、フレッシュな状態で試合に臨めていることも大きいのかもしれない。
前日の試合で、奇跡的なラストショットを決めたチーム長野の勢いを凄いと感じ、カーリングをやっている知人に「明日、長野が連勝するかもしれない」なんて話したものの、スコアボードには次々と大きな数字が刻まれる。
そして、8エンドが終わった時点でチーム長野からギブアップ宣言。この瞬間、来年の2月にバンクーバーのアイスに立つチームは決まった。
青森に住む人間なので、この結果には素直に喜んでいるものの、ちょっとだけチーム長野のことに対する意識が強くなっている自分もいる。
きっと、それは試合終了後、チーム長野の応援席に深々とお礼をしたチーム長野のプレイヤーの姿に、カーリングの本質であるフェアプレー精神を感じたからに違いない。
2月のカナダ、色々な人の思いと共に、強く逞しくなったチーム青森のストーンは投じられる。