一駅移れば、文化圏が違うといった具合に、
昼間過ごしている東京駅界隈と神田界隈とでは、
街の賑わい感が全然違うものですが、
そんな神田にあって、趣ある佇まいをしたお店がありました。
鴨が描かれた暖簾を潜って目に入ったのは、
ご主人と奥様のお二人で切り盛りしている姿。
そして、ワイシャツ姿のサラリーマンが、
美味しそうに魚を頬張っている姿。
つまり、ご近所さんに愛されているということです。
夜は暖簾に描かれているように、
野鴨の料理を出しているようですが、
お昼は普通に定食を出してくれます。
ということで、刺身定食を注文。
すると、おかみさんがテーブルに運んできたのは小さな瓶、
その中に詰まっていたのは、大きな梅干し。
まずはこれを一粒。
それから、ごはんに味噌汁、主菜にサラダといった具合に、
少しずつ目の前に集まってきます。
全部揃ったところで、いただきます。
貝の一粒一粒から余すところなく旨みが染み出た味噌汁、漬物、梅干し。
ご飯との関係は普遍です。
そして、分厚く切られたカツオの刺身。
大きな薬味皿に醤油を注ぎ、
ちょっと混ぜたらカツオに乗せます。
あとは、無心になって食べるだけ。
ご飯を中心におかずや味噌汁の美味しさでお腹を満たす。
これぞ、普通の定食だからこその幸せです。
お会計の後、おかみさんからもらったのは一粒の飴。
どうして、手渡しで受け取る飴は美味しく感じるのでしょうか。
不思議なものです。