丸の内・ポワンエリーニュ パン3種(870円)
丸の内線の改札を出て徒歩3分。新丸ビルへ地下1階から入り左手にゴディバのお店を見ながら先に進むと、こんな看板が目に入る。自分は未訪の2店ではあるのだが、ここは吉祥寺のダンディゾンや表参道のデュヌラルテをプロデュースした、淺野正己シェフによるパン屋さん。
扉がなく間口が広い入口から垣間見えるのは、温もりが伝わってくる色合いのカウンターに置かれた焼きたてパンの数々。このカウンターはL字型となっており、焼き上がりの色合いだけ見ると、表面の色が強いものから、弱いものへとグラデーションが成立しているようにも思える。
で、どれを買おうかと眺めていると、新たに焼きあがったパンも運ばれてくる。そうなると迷いが止まらなくなってしまうので、この時点で注文したのは、桂(かつら)というクロワッサンとクルート、そしてシュクセ。ここは、入口からカウンターまでの空間が少し狭いので、店員さんから注文したパンの名前が書かれた紙を受け取り、それと交換でレジの前で受け取るというシステムになっている。
最初に食べたのは、胚芽のクロワッサンである桂。
最初の香りは強め。まるで樹木の表皮のようなクラストの、サクっという軽さと少し強さを持った食感から広がるのは、粉の甘さというよりチーズのような濃厚なコク。そして、飲み込む瞬間には焼かれて生まれた印象的なホロ苦さが広がる。
クラムから感じるのは豊富なバターのコク、でも塩っぽさはない。一通り食べて思ったのが、味のふくらみ幅が予想以上に大きいという印象。
個人的には、(パンとケンカしてしまいそうな)甘さあるジャムより、酸味が効いたジャムとの相性がいいのではと思った。
次に、クルートの「コッション」。
これは、バゲットで豚の肩ロースをブレゼしたものとエシャロットのマリネを挟み込んだもの。一番強く印象に残る味は、エシャロットの酸味。そんな強めな食材の味が、クラストが柔らかいバゲットによってやさしく包みこまれている。
一方、肩ロースはなかなか強めの味。具材同士の組み合わせだけで考えると問題はないのだが、パンとの相性となると、意外に和風な印象の味にも感じられるので、この一種の違和感のようなものを好きか苦手かという、個人差が生まれる味だと思う。
そして、シュクセ。
砂糖の量とは対照的に、全体に薄味。口の中でグラニュー糖の角が取れて丸くなるにつれて、生地の味と融合し甘さの余韻を作り出す。また、ふわっと感じる苦味が、甘さを引き出していることもあり、絶対的な味の濃淡幅は大きい作りではないのだが、逆にこの幅で濃淡を作り出していることがすごい。
全体に少し価格帯が高めなので、手ごろに買えるパンという訳ではないのだが、パンという料理が持つ色々な側面を知るには、うってつけのお店だと思う。
————-
今日もご覧いただきありがとうございます。あと一押し、お願いします。人気blogランキングへ