新潟県新潟市・cafe砂場 砂場スペシャルと焼き立てスコーン。
よく「旅の目的は人と出会うこと」なんて耳にします。
初めて訪れる地に住む方と一言二言、
その場所に関する会話をするだけで、
心の中に街への興味関心が生まれ、
色々な扉をノックする機会が増えていく。
街を好きになるということは、
そんな感じなんだと思います。
決して、ガイドブックだけで好きになるものじゃありません。
古町の中心街から一歩路地に入ると、
長屋のような建物が目に入ります。
細い階段の上にある青いファサード、
ぽこっと浮かび上がる出窓、そして濃紺の看板。
これが、cafe砂場の目印です。
階段を上ってお店に入れば、
ママさんとおぼしき女性が出迎えてくれました。
窓際や棚を占めるのは無数の雑貨や雑誌、
シンプルに何も置かないカフェが今どきのスタイルとすれば、
ここは昭和の面影がそのまま残る一角。
青森で言うところのマロンのようなお店。
「観光でいらっしゃったんですか?」
ママさんがそう声をかけてくれたのは、
明らかに大きなカメラを持ってるからなのですが、
こんな一言が街への入口になるものです。
お店のメニューを眺め、
気になったのは「砂場スペシャル」という珈琲とスコーン。
特に前者は800円という価格だったので、
ちょっと躊躇したのですが、
旅先で食べずに後悔することほど、
大きな心の痛手はありません。
なので、この組み合わせで注文しました。
一杯ずつ丁寧にネルドリップで淹れる所作、
お店の柔らかな照明に呼応するかのように、
ポットにゆっくりゆっくりと。
まるでお店のリズムをコーヒーが奏でているようです。
酸味や甘味、あるいは苦味といったものが
飛びぬけて強いのではなく、
全体にスケールが大きく懐が広い一杯。
ぬるめのお風呂と同じで、
いつまでも浸っていたい美味しさです。
「よく、アルビレックスの試合を見に来た関東の方が、
うちのお店にお越しいただいてるんです。」
そんな感じでお話を伺っていると、
スコーンの焼き上がりをオーブンが告げました。
サクサクとほのかにしっとりした食感、
プレーンに紅茶にパイン。
味の違いを確かめながら、
シロップをかけて一口食べ進めるたびに、
珈琲が恋しくなります。
帰り際に再訪を告げると、
「あ、私はいつもいるわけじゃなくて、月数回ぐらいなんです。」
という一言。どうやら、オーナーさんは別の方のようでした。
でも、お店の雰囲気やコーヒーに触れること以外にも、
月数回のタイミングに遭遇することが、
このお店に来る理由になりました。
街を好きになるということは、
そういうことなんだと、改めて感じました。