東池袋・多津よし 牛タン百景
池袋が身近な場所で生活していると、
今度は東池袋のことが気になってくるものです。
で、ある日の晩。
この界隈で夕食を食べようと思い、お店を調べてみたら、
いつの間にやら、一軒の牛タン屋さんが気になっていました。
都電の駅からちょっと歩いた商店街の入口、
ここに静かに佇んでいたのが、多津よしです。
入口の引き戸の前には厨房を囲むカウンター、
左奥には4人掛けのテーブル席があるのですが、
厨房の奥、まるで家の応接間のような座敷が、
気になって仕方ありません。
メニューは少なく、牛タンとテールスープ、
そして煮込みに麦とろ、お酒がいろいろ。
品数は最小限でも、一つ一つが奥深そうなラインナップ。
で、そんなお店の壁に貼られていたのは、牛タン定食。
最初ということもあったり、あまり飲めないお酒というよりも、
ごはんガッツリモードだったので、これを注文してみました。
ところが…すごいのが来たんです。
これぞ、完璧な牛タン定食。
ピンと立った牛タンがあって、
テールスープという名のミートスープがあって、
黄色いトロロがあって、麦ごはんがあって。
熱々の牛タンを頬張れば、
グシュグシュという音と共に旨みが口中に染み渡り、
更に南蛮味噌も合わせた日には、
ご飯が進まない理由はなく、
白菜の漬物が進まない理由もありません。
そして、テールスープが反則でした。
柔らかく煮込まれた尾の肉と、
どの一滴を口にしても旨みが詰まったスープ。
勿体ないから飲み干したくない、なんて言ってはいけません。
冷める前に美味しいうちに飲まないと、罰が当たります。
そして、とどめを刺してくれたのは、トロロかけ麦ごはん。
出汁の効いたトロロが麦と米の間に流れていくほど、
ずずっと飲むように口が動き、
茶碗の中身は胃袋に収まっていきます。
あぁ…もう、本当に幸せです。
しかも、これで1,700円。
本当に驚きです。
そんな興奮は何度も味わいたいもの。
数週間後、再びカウンター席に座ったのです。
まずは、牛タンの煮込みを注文。
飴色に柔らかく煮込まれた牛タンは、
繊維感はそのままに、
口の中でほろっと崩れてしまいます。
次に、牛タンを二種類焼いてもらいました。
七輪の炭火で生まれる薫りが、
早く早くと手招いています。
サクっと歯ざわりよく、
軽快に噛み切れる赤身と、
グシュグシュと噛みしめるほどに、
味が滲み出るサガリ。
考えてみると、
「牛タンが食べたい!」イコール
「あの食感に会いたい!」なので、
色々な食感に出会えると、満たされ感が倍増します。
そして、締めに特上牛タンを注文。
すると…
妖艶なグラデーション、
触れてないのに感じる弾力。
とにかく、すごい迫力です。
一口頬張れば…困ってしまいました、美味しすぎて。
食感の心地よさと旨味の、衝撃的なコンビネーション。
出会えて幸せです。
笑顔が素敵で気さくなご主人の、牛タン愛に満ちた空間。
しばらく、足繁く通うことになりそうです。