2008年の奥入瀬渓流

実家のある神奈川に住んでいたときは、車に乗って遠出しようなんて、それほど思わなかった。
でも、青森に来たらそれは一変。車で色々なところに遠出しようと思うようになった。

そんな自分がまだ訪れていなかったのが奥入瀬。車に三脚とカメラ、あとはニールヤングやプリンスが入ったMDを乗せて車を走らせることにした。

市街地を抜けると、行く道はアップダウンを繰り返し、急に高原が目の前に広がる。全開にしていた窓からは、酸ヶ湯温泉から立ち上る硫黄の香りが、少し冷たい風と共に車の中を通り過ぎていった。

峠の細かい曲がりくねった道を降り、蔦温泉を通り抜けると、急に右側に川が見えてきた。カーナビによると、目的地はすぐそこらしい。

奥入瀬橋を渡ると、すぐ先にはちょっとした物販施設があり、日曜日なんかはせんべい汁を無料でふるまってくれるようだ。でも、車は先へ先へと進んで行く。やっぱり、渓流日和だったんだと思う。

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まるで、空を流れる雲のような流れが、カメラのモニターに映し出されると妙にうれしくなったり、
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差し込む薄日が、碧くあり緑に染まった空間に差し込んだ姿を見て、自然が魅せる無限の色合いに感激したり。
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少し大きめの石が敷き詰められたスペースで、あぐらを掻きながら静かに流れゆく川の姿を眺めたり。
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でも、激しい流れをふわふわの綿菓子のような姿でカメラに収めると、内心ガッツポーズなんかをしている自分もいる。
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カメラを縦から横にするだけで、見えなかったものが見え出して、見えていたものが見えなくなる。そんな変化も楽しかったり。

三脚をセットしていると、渓流をトレッキングしている方から、「こんにちは」なんて声をかけられたりもする。この空間はみんなを癒やしてくれる。

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石ヶ戸の瀬から車を走らせて、少し十和田湖方面に行くと左手に「阿修羅の流れ」の文字が記された場所に出る。

馬門橋を渡り、ゆるやかなカーブを曲がったとき、なぜだかよくわからないものの、独特な雰囲気を感じた。緑の隙間から差し込む光の量が減り、その一角だけ惹かれるような何かに包まれていた。
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渓流の流れに身を任せていたら、いつの間にか車を駐車帯に停めてはカメラと三脚を担ぎながら動き回る自分になっていた。
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自然のクーラーが身体を心地よくし、逆に頭の中の回路をグルグルと回してくれる。たぶん、風景写真を撮ることはその風景の最高のファンになり、惚れて惚れた姿を心に収めながらカメラに収めることなんだろうと思ったり。
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なんて、本当は何にも分かってないくせに、生意気なことを思ってしまうのが恥ずかしい。
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三脚の脚を縮めながら目の前の流れを見ていると、生意気な自分なんて一飲みされてしまいそうだった。
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次に足を止めたのは雲井の滝。高さ25メートルの滝は少し奥まったところにあるので、車の窓を閉めてロードノイズとカーステレオだけの空間にいると、ひょっとしたら通り過ぎてしまうかもしれない。

というよりは、この空間に一番似合うのはオープンカー。特に、ダイハツのコペンみたいに、小さくてキビキビと走ってくれるやつが似合いそうだ。
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激しい瀑布から生まれた小さな流れで、少しだけぬかるんだ地面を一歩ずつ滝つぼに近づいてみると、髪には玉雫がついて、レンズの表面は雨中の撮影みたいになる。

轟音と共に、髪だけに付着した玉雫が少しずつ身体をも包み込む。でも、魅せられた場所から離れたくない。半そで一枚の自分にとって、自然が作り出すジレンマは残酷だ。

さぞかし身を削る思いでそこにいる、修行僧のような岩の姿にも後ろ髪を引かれつつ、この滝を後にした。
タオルでレンズを拭いて、冬場だったら凍結した姿を拝むことができる、白絹や双白髪といった滝を車窓から眺めながら、銚子大滝へと向かう。

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幅20メートル、高さ7メートル。綺麗な長方形をした滝は、奥入瀬の流れに逆らって十和田湖に入ろうとする魚たちにとって、高くそびえる壁となっている。
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大量の水が流れ落ちる様は、まさに壮観の一言。
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スローシャッターで撮影すれば白く細やかな糸が布になったような姿になり、スピードシャッターで撮影すれば、水しぶきの塊が滝つぼめがけて落下する姿に。
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そういえば、数年前にコンデジ片手に眺めたナイアガラも、そんな姿だった。
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青い空の下、瀑布によって作り出された虹が、真っ白なキャンバスに描かれたあの時と、白い一本の虹が、白い布に描かれた目の前の時間をシンクロさせながら、その身をひんやりとした風に当てることにしよう。
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この銚子大滝の滝つぼにはもう一本、別の沢が流れ込んでいる。
この場所で足を止めたとき、妙に身体が冷えた。でも、岩場が作り出す流れが印象的だ。その名を寒沢の流れというこの場所は、五感で印象に残る場所となった。
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さて、この素晴らしき渓流の記憶を胸にして、次はどこに車を走らせよう。

【この記事を書いた人】

合同会社ソトヅケ代表社員/Local-Fooddesign代表

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