八戸・ごめ せんべい汁×サバ缶という組み合わせには、想像しえない旨味が詰まっていた。

07/01/2009青森,東北,よるどき

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横丁。
そこに通う理由は酒を飲んだり旨いものを食ったりすること。そんな時間を仲間と共有したい時、舞台として申し分ない存在となる。また、一人でふらっと一軒のお店に入って、カウンター越しに店主と口の会話と目の会話をしながら、料理や酒を堪能するのも横丁が持つ醍醐味。
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賑わいは似合うけど、喧噪は似合わない。そして孤独と影が似合う。
横丁を構成するお店からは、店主が生きてきた時間にしか生み出せない非画一的な温もりが、細い通路や少し広い道に満ちている。それを感じるためだけに足を踏み入れる。それも醍醐味の一つ。
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ある日、大人数で八戸のとある横丁に足を運ぶ機会があり、訪れたのは「ごめ」というお店。
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カウンターは5、6席。あとは座敷と小上がりが1つずつ。ほんのりと照らす白熱灯と厨房の蛍光灯とのコントラストが、お店が作り続けてきた時間を立体感のある姿に変化させる。
ウーロン茶やビールが、小上がりのテーブルを縦横無尽に移動すると、おのおののグラスは液体で満たされた。
さぁ食べよう。さぁ飲もう。無邪気に楽しい時間を共有しよう。そんな時間の最初に運ばれてきたのは、南部せんべいのピザだった。


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こんがりと焼かれてパリっと感が増したせんべいの耳と、表面の大半を覆うチーズとの相性がよく、香ばしくなって更にパワーアップした噛み心地と、トロ~っととろけるチーズのコクが、独特の味を生みだしている。
普通のピザに似ているようで似ていない。ただ、チーズと粉もんの相性は普遍。そんな感じか。
そして、それを食べている間も気になるのは、目の前に鎮座したせんべい汁。ただし、これにはまだ南部せんべいは入っていない。
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そこに、鍋奉行が鍋にせんべいを投入。この南部せんべい、色白系なので割りやすい印象を受けるものの、実際にはけっして割りやすいものではない。なので、両手で食べやすい大きさに割る鍋奉行もいれば、片手できれいな割り方を披露する鍋奉行もいる。
基本的に、両手だろうが片手だろうが、味が劇的に変わるものじゃないが、器用に卵を片手で割る人に対する尊敬と同じようなものを送ってもいいと思う。
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あとは、グツグツと煮立たせる。とはいえ、煮すぎると目指すアルデンテの食感にはならない。このあたりも奉行の腕の見せ所か。
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色の変化でしんなり感がお見通しとなったら出来上がり。
今回のせんべい汁の特長は、サバ缶が入っていること。八戸と言えば、脂の乗った八戸前沖サバをブランディング展開しているように、「ならでは」の魚。そして地元に根付いた魚。
そのサバをふんだんに使ったせんべい汁。青臭さのない旨みが加わり、あっさりとした口当たりの汁の味を、ボリュームアップしている。これは旨い。
そして、せんべいの食感もドンピシャのアルデンテ。初めて、せんべい汁を食べたとき「せんべいでアルデンテなんて、うそだろぉ~」と思ったものの、目の前にあるのは本物のそれ。
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せんべい汁のおかわりを2杯3杯と食べながら、ふわっとやわらかな甘みが広がるイカ刺しと、お手製イカゲソの塩辛をつまむ。
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香ばしくも焦げ苦さのない、中に漬物がたっぷり詰まった焼きおにぎり。お茶漬け的に汁に浸すお試しもすればよかった…と若干の後悔。
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そして、自分的に秀逸だったのがキクの天ぷら。キクとは、南部地方では「タツ(真鱈の白子)」をさす。カリッ、フワっという具合の軽い口当たりから、困ってしまうぐらいに中身があふれ出す。これはうまし。
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最後に出てきたのは、長いもの皮を素揚げにしたもの。いきなりネバっと目覚める瞬間があり、それが楽しすぎる一品。
困ってしまうぐらいに汁を食べ、キクの天ぷらを食べ、ウーロン茶を片手に色々をバクバクと食べる。うーん…旨いものが多すぎると困ってしまう。

著者プロフィール

takapu

ごはんフォトグラファー/Local-Fooddesign代表
食にまつわる各種コンテンツ制作(フォトグラファー、エディター、フードライター、インタビュー)、商品開発・リニューアル提案、PRツール・ロゴ制作などを手掛けます。
創業75年以上の老舗食堂を紹介するウェブサイト百年食堂の制作・運営もしています。
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Posted by takapu