中野坂上・おむすび屋こめり 茎ワサビ、玄米おこげ、紅鮭おにぎり、唐揚げ(580円)
小さい頃から、
自分にとっておむすびは母の味。
熱々のご飯を冷まして、手に塩を取りぎゅっぎゅっと。
何百粒かの米粒が、朝日で輝く三角むすびに姿を変える。
一つ一つができるまでの時間は短くても、
その手は長い時間でできている。
だから、おむすびを食べると母親が過ごしてきた時間が、
多少なりとも共有できるような気がする。
機械で模られたおにぎりは、
三角だろうと丸だろうとやっぱり何か違う。
何も共有できないからなのかも。
中野坂上の駅近くにあるおむすびのお店、
ガラスケースには10種類ぐらいのおむすびが並び、その上にはお総菜。
出来立ての美味しさと、落ち着いた感じの美味しさが一緒に並んでる。
お店でおむすびを選ぶ基準は、正直言えば具の目新しさが第一。
あと、米の種類が色々有るときは、具がかぶらないこと。
茎ワサビを選んで、玄米おこげを選んで、
最後の一つは紅鮭に。
そのうちに、ガラスケースの上には揚げたての唐揚げ。
これもワンパック分注文。
おむすびを食べるときは、いただきます。
どんな料理よりも、この言葉がしっくり来る。
手にしただけで崩れるような、あっけない繋がりじゃなく、
歯に当たってぐにゅっと潰れて押し返すものでもない。
空気で繋がり空気が結ぶそれがおむすび。
このお店のおむすびは、大きさこそ小さめなのに、
ボリュームは申し分なし。しかも、お米のほぐれ具合が心に染みる。
茎ワサビの心地よく爽やかな刺激、
玄米おこげの、プチプチと弾ける食感と滲む旨さ、
紅鮭のほぐし身とご飯が混ざり合う感覚。
この楽しさがないと、おむすびじゃない。
揚げたてだった唐揚げの香りは、
少し落ち着いた感じになって、
幸せな弾力と共に、
ほのかにニンニクしている醤油ダレと肉の旨みに浸る。
母親がおむすびを作る時も、唐揚げが欲しいとわがままを言って、
遠足の時も運動会の時も、その組み合わせが楽しみだった。
自分にとってのハレの日ごはんは、やっぱりこれ。
だから、おむすびが大好き。