香川には、「骨付鳥」という隠れた名物料理がある。
これは、骨付きの鳥肉をスパイスで味付けして、それを蒸し焼きにするという、どことなくギャートルズ時代的な料理で、讃岐うどんや「讃岐三畜」に続く食べ物系の名物にしようと、四国の経済団体まで巻き込んで、ちょっとしたムーブメントになっている料理である。
「骨付きなんでしょ?じゃぁ…すんごいんだよね?」
という、自分の中に溢れた思いを確かめるべく、向かった先は、高松市内で最初に骨付鳥を出したという、兵庫町にある居酒屋さん。
ここに来る10分前、前のお店で豪快に魚を食べたばかりだったので、注文は骨付鳥オンリーの一品勝負と決めていた。ただ、ここの骨付鳥には「若どり」と「親どり」の二種類があるのだという。
説明文を読めば読むほどに、両方食べたくなるのだが、お腹に入るのはどちらか一つが限度。今年、一番悩ましい選択を迫られた結果、親どりを注文。
調理法も色々あるのだろうか、どことなく俳優の堺雅人に似た店員さんから、「オーブンで20分ぐらい焼くので、ゆっくりお待ちください。」という声をかけられたので、Sky.Aで阪神タイガースのキャンプ番組を見て待っていると、香ばしい香りと共に、何やら近づいてきた…
肉の大きさもさることながら、お皿にたっぷりとたまった脂の量に驚き。そして、その表面からは、「旨そうでしょ?」と言わんばかりのオーラを発している。
しかも、これを裏返すと…
「かぶりつきたいでしょ?」オーラに誘われてガブっとかぶりつく。
塩コショウの刺激、皮のパリっとした食感に続いて、身が歯に当たった瞬間、それはまるでジビエのようにゴリゴリとした恐ろしいほどの弾力。しかし、この弾力に比例して噛むごとに感じる旨みは、力強いの一言!まるかじりものなのに、切れ目が入っていることにも納得。
はっきり言って、一切れを飲み込むまでに、50回近く噛まないと飲み込めない。そして、飲み込むと「プハァ」と声がでる。でも、それは短距離走を1本こなした後の達成感に近い。
また、一緒についてくるキャベツの役割も大きい。塩コショウの味と対比して、甘さを感じるので、口休めにはもってこい。そして、このキャベツをお皿にたっぷりと流れ出した脂につけると…たまらない。
この脂には鳥エキスがふんだんに入っているので、最後の一押し的にコクを感じる。
骨は脂でしっとりしているので、一度手で持ってしまうと離しづらい。でも、口は塩コショウの味も蓄積する。なので、キャベツ&オイルプレイをしたり、飲める人は当然ビールと交互交互となるので、口を拭く紙は最低3枚は必要となる。
大食い派の人は、若どりと一緒に注文して食べ比べるもよし。昼間は讃岐うどんラリーでのコシを感じて、夜は鳥の弾力を感じるもよし。2007年、香川の名物料理は骨付鳥しかない。