『国家公務員に副業解禁』の一報!もし、自分がノンキャリア公務員だった当時にこの制度があれば手を挙げていたか?という話

15/06/2018お仕事

今日の夜、日経新聞の電子版に掲載されたこの記事に驚きを隠せませんでした。

2015年の4月に公務員を辞めた自分にとって、「いよいよなんだ…!時代が変わったなぁ」という印象が大きく、数年前には考えられない動きが巻き起こるかもしれないと思っています。

ところで、この制度を「自分がノンキャリア公務員だった時代に使うだろうか?」という視点で見ると、公務員の人事や働きがいといった問題が浮かび上がってくるんだなぁと。そこで、自分が持つ経験を踏まえて、この制度が有効に活用されるのに必要なものって何だろうか?そんなことを纏めてみました。

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そもそも、役所に入ると「公のため」が「自分のため」になってしまう

よく言われる話ですが、国家公務員として各省庁に採用された後、基本的には理想と高い志は打ち砕かれ、幻滅に直面するほうが多いものです。理想的な所属先に配属されなかったという人事系の悩みから人間関係まで。大小問わず人それぞれに壁が生まれてしまうものです。

特に自分みたいに高卒で入ると視野が狭くなるというより、視野を広げる機会がないもの。与えられた仕事はバックオフィスが多く、しかも人事院規則や給与法、あるいは会計法、予決令といった公務員に特化した法律がベースのため、結果として仕事上色々な視野を広げる必要がないためです。

また、安定した環境に置かれるために、「仕事の質を高めないと生活できない!」というハングリー精神を持つ理由が生まれにくいことも、他者を考えず自者優先主義になってしまう大きな理由です。働くことにハングリーじゃなくても生活できてしまうという点では、人事評価はもっとシビアになされるべきですが、人事評価をする側がされる側になることもありえる人事制度なので、なかなか難しいところなんでしょう。

ちょっと自分の公務員時代のことを書きます

自分の場合は高卒で公務員になってバックオフィスの仕事をしているうちに、もっと豊富な知識を持たないと自分がやりたい仕事もできないと考え夜学に通いました。色々な視点を持って事業をすることで仕事がしたいと思った結果、ランチタイムという視点で世の中を理解したいと思いこのブログを始めました。

特にブログがきっかけで、多くの方とのつながりが生まれ今に至っています。特に青森県庁での二年間は今の自分を作った礎。そんな機会を与えてくれた多くの方への感謝は今も忘れていません。

一方、ブログを通じて多くの人と合う機会があった一方で、「残業が当たり前」という空気の所属先に配属されたこともありました。採用時に配属されたバックオフィスの直属の先輩職員が、残業時間に漫画雑誌を読んでいた姿を見て幻滅した自分にとって、正直これほど息苦しいこともありませんでした。

もちろん仕事はチームプレイなので、特に繁忙期にはそういった自分の時間を削ることも大切です。急にイベントを開催することになって、仕事が増えるなんてこともありますし、そもそも俸給をいただいているのですから。今回の兼業の話にもつながるのですが、基本的には全力で本業第一です。ただ、自分の心をどこまで殺せるかは別ですが。

今振り返ると「自分の仕事を終えた後は自分の時間」という考え方自体が、当時の公務員という空間にはフィットしなかったんでしょうね。

そもそも、色々な制度設計や事業に関する意思決定はキャリア官僚の仕事とされ、その下で働くノンキャリアが資料を作ったり事業費を執行する契約関係の仕事、あるいは庶務仕事をするのが一般的です。そして高卒で入った人間には、こうした書類を見た上で問題点を感じても、それを反映して事業のクオリティを高める機会すらなかなか与えられません。

もちろん省庁にもよるのですが、原則的には学歴・採用試験主義で動いているのは変わらず、能力主義になっていません。学歴を問わず専門性や一種のタレント性のような特技を重視して、配属するところもあるかもしれませんが。それは知る限り本当のレアケースです。

では、今も自分が現役だった場合にこの制度に手を挙げるか?

答えはもちろんYESです!

自分が公務員を辞めた理由の一つが、「10年後、自分は何をしているんだろう?」と、未来の自分の仕事が公のためになっていると自信を持って言えない点でした。公のために公務員になったのに、内部のために公務員の仕事をすることも多かった自分の心にウソはつけず、退職願を書きました。

公益性を持った組織の仕事に携わることで、頭の中に民の回路を作り、そのマインドを公の仕事にフィードバックする。

この制度がしっかり機能すれば一人の公務員としても、未来があるかもしれないんですよね。後述しますが、キャリアパスが不明瞭の中で公務を続けるのって、自分の経験を元にすると難しいんです。

自分が現役のノンキャリアと仮定して、申請時に考えるであろう懸念点

記事にも記されているのですが、全体のルールとしてOKでも各省庁が詳細なルールを作るとあり、結果的に省庁によって温度差が生じる可能性があります。特に経産省や国交省、観光庁あるいは農水省。文科省といった事業官庁のほうが、制度を導入する空気が生まれやすいのでは?と感じます。

一方、事業を持たない官庁はこういった制度の導入が遅いのではと、経験則として感じます(特に人事部局の決裁時点で積極的にOKを出さない可能性が高いいのでは)。

また、キャリア官僚の忙しさについて記事で触れられていますが、「キャリア官僚だから兼業OK、ノンキャリアだから兼業NG」なんてことが起こらないで欲しいものです。適性は人それぞれ。バックオフィスに適さない代わりに、事業センスに長けているノンキャリア職員もいるはず。人事的にノンキャリアには本業に専従させたいと考える意向も働くかもしれないですが(特にこういった制度に対して消極的な人事担当が配属されている場合)、これはトップダウンで防いで欲しいものです。

特に若い公務員にとっては水戸黄門の印籠のように、トップダウンで動きやすさが決められたほうが、手を挙げやすいでしょう。こういった制度で新しいキャリアパスは生まれるべきです。「若いから役所の雑巾がけをしろ」ではなく「若いから色々な現場の雑巾がけをしろ」がいいですよね。

ただ、自分が現役だった時に、他省庁からの出向者がNPOの取り組み熱心だった姿を見て、「定時内でベストパフォーマンスを発揮して、定時外も公的な取り組みをするなんてスゲー!」と思った経験があるのですが、逆に兼業に夢中になって他の職員に迷惑をかけるケースも見てきました。

とにもかくにも、キャリア官僚ためだけの制度ではなく、すべての国家公務員のモチベーションと仕事スキルが向上するための制度であって欲しいものです。

目的は公益であり「事業」を理解すること。1円を稼ぐのがどれほどに大変かを知ること

そんな制度となって兼業を認められた人が改めて考えるべき点は、この制度は「現場を知るため」という面を持っていること。

NPO等で活動することで直接的に公益が生まれるのは素敵なことです。その経験が省庁の現場にフィードバックされることで公益の幅が広がるのであれば、更に素晴らしいこと。その中で役人が持ち合わせてないとされるコスト意識を肌で感じることが大切だと考えています。

多くの民間経験を持たない公務員は、一円を稼ぐことが禁じられていたので一円の稼ぎ方を知らないものです。無駄遣いがなくなるためには、一円の価値を身体に叩き込む必要があります。

ただ、他者のために尽くすことで結果として一円を稼ぐのであって、小遣い稼ぎ感覚で兼業しようと考える公務員の抜け道になるぐらいなら、こんな制度は止めたほうがいいですね。

地方公務員にもこの制度が早く導入されてほしい!

経験上、国家公務員よりも地方公務員のほうが学歴を問わず適性ややる気を重視した配属が多いと感じます。こうした方が制度を活用して行政仕事にフィードバックすることは、国家公務員以上に効果が大きいかもしれません。

ただ、事業とお金が近いのも地方事業の特長。癒着があってはならないですし、地方公務員のほうが細かく規制する必要があるかもしれません。あと、これは国家公務員にも言えるのですが、「この制度を使って公益のために兼業している公務員」という立場を、カリスマ公務員の金看板のように使うのは本末転倒です。

兼業をしているときに「自分は公務員を辞めたほうがいい」と思ったら

自分の場合ですが、公務員を辞めて数年経過した今のほうが公務員らしい仕事をしているのかもしれないと思っています。

現在の自分は、食や旅をテーマにした商品開発やコンテンツ企画・制作、講演等によって事業者のお手伝いをさせていただいてます。(上の画像は、復興庁の専門家として制作した、農家さんのパンフレットや商品パッケージです)

もちろん、一人の自営業者として自分自身の生活を守ることも必要なのですが、「多くの方のお役に立ちたい」という思いは、こうした仕事を通じて実現できています。そして、ありがたいことに色々なお仕事をさせていただく中で、色々な職業の方とお話をしていると得るものが多く、自分の未熟さを感じるのと同時に多くの学びを得ています。

これも記事に書かれていた話ですが、今回の制度によって農家さんのように小さな事業者を手伝うことで、「自分の適性が公務員という箱の中ではなく、外に出て公のために尽くすことにある」という気付きのきっかけになるのも、本人のためにいいと思います。公のための仕事は公務員じゃないとできないわけじゃないですし。それは人生のステージを変えるきっかけに出会えたということです。

勉強できる環境に身を置くことができ、安定した基盤を持つからこそ、この制度を通じて公務はもっとダイナミックになり、そして幅広い公益が生み出せるはず。そんな制度のスタートが一日も早く切られればと願うばかりです。

著者プロフィール

takapu

ごはんフォトグラファー/Local-Fooddesign代表
食にまつわる各種コンテンツ制作(フォトグラファー、エディター、フードライター、インタビュー)、商品開発・リニューアル提案、PRツール・ロゴ制作などを手掛けます。
創業75年以上の老舗食堂を紹介するウェブサイト百年食堂の制作・運営もしています。
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Posted by takapu