ガラス越しに見えたこのケーキ類に目を奪われて入ったこのお店。高知らしいケーキはないものか…と探していると、目に入ったのがこの一品。
一見、フルーツがたっぷりと盛られたケーキなのだが、これに使われている柑橘類は、文旦と並んで高知県を代表する「小夏」である。
で、小夏の特長は何といってもその剥き方。通常のかんきつ類を食べる際には、皮を指や道具を使って白い甘皮をキレイに剥き取るのだが、小夏は酸味が強いかんきつ類なので、甘皮を残すことによって酸味とのバランスを取ることになる。なので、りんごのごとく包丁やナイフで表面の皮を剥くことで、甘皮を残して剥き取ってから包丁で切って食べる。
また、小夏は実は小玉のほうが味が濃いので、実際に購入する際に果物屋さんで値段と大きさの推移を見ると、何となく違和感を感じてしまうものでもある。
そんな小夏を初めとした果物やオレンジのゼリーが、ふんだんに盛られたこのケーキを買って、ホテルにて食べることに。
やはり、ここまでたっぷりと果物やゼリーが盛られていると、クリームの量が相当あるにもかかわらず、期待通りに酸味やゼリーの食感が勝って、食べやすいバランスとなる。そして、それが不思議な満足感と後味の爽快感を生み出すので、一気に食べることができる。
主役の小夏は、甘皮のクシュっとした食感から、じゅわっと一気に広がるその酸味によって、ケーキの印象を一回り強いものにしてくれる。食べ応えは申し分なく、食べていてフルーツの満足感と、ケーキとしての満足感の両方が楽しめるこの一品。パティシェールの気まぐれにしては、確信犯にしか思えない味となっていた。