溜池山王・LAWRY’S お腹だけではなく、気持ちも満たしてくれるプライムリブ
これは今から約3週間ほど前の話。こちらの方の呼びかけによる、定例の「タベン会」という、食べるものや食べることそのものを勉強するというコンセプトの会合で、赤坂ツインタワーの地下にあるこのお店へ。
今回の参加者は、この会のレギュラーであるabuyasuさま、のむのむさま、あなさま、そしてゲストタベニストとして、多くの飲食系ブログに登場する際、異彩の持ち主として紹介されているこの方。お店の前で合流し、小屋のような入口から店内へ向かう。
実は、このお店が開店して数ヶ月の時に、ランチタイムに一度訪問したことがあったので、自分は入口とのギャップに満ちた、広々とした店内空間を知っていたのだが、今回は主催者と自分以外は初訪問。ということで、他の参加者が店内空間を見たときには、不思議な空気が流れた。
さて、ここはプライムリブ(あばら骨周辺のお肉である「リブ」のうち、品質の高いものに対して米国農務省が「プライム」のお墨付きを与えたもの)のお店。ということで、注文するのは当然これになるのだが、肉の大きさや切り方によって、その名称が変わる。で、自分が注文したのは、このお店のスタンダードでもあるロウリーカット。それでも、メニュー上では2番目に大きいカットである。
まずは、シャーリーテンプルという、ザクロと砂糖のシロップを使ったノンアルコールカクテルを注文し、テーブル担当のリーナさんによって運ばれてきた。
思っていた以上の軽快な飲み口から、ほのかな酸味と甘みがすうっと身体に入っていく。
テーブルに運ばれてきたパンを食べながら、ゲストタベニストの方が持つ類まれなエピソードについて色々と話していると、前菜のシーフードアペタイザーが運ばれてきた。
エビ、サーモン、マダイ、そしてカニ。華やかなプレートを彩るそれぞれの素材の味は、ソースに負けることなく、そしてソースとしっかりと調和する味。また、野菜はあくまでもツマ的扱いなのかもしれないが、自分にとってはこれとソースの組み合わせの味が印象的。お肉が主役のお店で食べる魚介のプレートということで、実は多少低めの期待値であったのだが、十二分に前菜以上の役割を果たしていた。
次に、お店の方が大きなボウルの乗ったワゴンをテーブルの横に近づけて、ボウルの上からドレッシングを降り混ぜて作っていく、スピニングボウルサラダが出来上がった。
これは、ドレッシングが少し強めの味なのだが、葉の味そのものが濃くしっかりしているので、ドレッシングに圧倒されるということなく、組み合わせの味を堪能することができた。前菜もそうなのだが、ここは濃い目の素材の味+少し強めの調味という、難しい組み合わせとなりがちなものを、しっかりと纏め上げて提供することで、色々な意味で洗練されたアメリカンダイナーという特長を伝えている感がある。
そして、お肉の薬味となる2種類のホースラディッシュが運ばれてくると、今度は大きなフルカバーワゴンが近づいてきて、カパっと開くとそこから現れたのは…
ワゴン内のライトで照らされた大きなプライムリブの塊。この姿を見るだけでも価値があるというぐらいに、ショーアップされていることと、目の前でカットされることで期待感が高まる。そして、ロウリーカットとしてカットされたプレートが、たっぷりのスピナッチ、マッシュポテト、コーン、ヨークシャープディング(イギリス風のパン)と共に、目の前にサーブされた。
自分は霜降り肉による脂を中心とした味も好きなのだが、それ以上に赤身による肉そのものの味が好きである。なので、このお皿が目の前に来て肉の圧倒的な力を感じることがあっても、「いやぁ、これは食べ進んでいくうちに、後々苦しいかもなぁ…」という印象はまったくなかった。
そんなお肉のボリュームは280グラム、ナイフを入れて口に入れると、グシュグシュっという強い噛み心地から溢れてくるのは、余分な部分がない肉の味そのもの。エキスを堪能するために食べるという具合に、次から次へと口の中に入っていく。
この肉の味に変化を与えるテーブルソルトが数種類あったのだが、やはり2種類のホースラディッシュとの相性がいい。特にホイップクリームと混ぜ合わされたものは、肉そのものが持つ強いエキスを、刺激を与えつつまろやかなものにしてくれる。
また、付け合せのスピナッチが持つ独特のクセや、マッシュポテトのボリューム感、コーンの甘み、そしてヨークシャープディングのパフっとした面白い食感が、肉の魅力を広げつつ個々の味でプレートの世界観を広げていた。
このお店、アメリカンダイナーということで、お客さんを自分達の世界観に案内するという気持ちがたっぷりと詰まっており、その一つがこのケーキ。
実はテーブルに誕生月の方がいると、ハッピバースデーの歌と共に運ばれてくるのだが、誕生月の人間がいなかったにもかかわらず、ゲストによる「560グラムのお肉完食記念」ということで、歌と共に運ばれてきたもの。イベント向けでしかもアメリカンな大味なケーキではというものではなく、ベリージャムの酸味が効いた作りだったことに好感。
食後のエスプレッソはダブルで注文。この量を飲むとエスプレッソ願望がしっかりと満たされると同時に、口の中が心地よい苦味でしっかりと引き締まる。
国によってサービスの方法は色々とあるのだが、このお店から伝わってきたサービスの精神は、「とにかく楽しませる」ということ。
それはエンターテインメントにも通じる部分もあり、入口から店内への導線や、サラダやお肉のサーブまでに見せる手法、歌といった具合に色々な方法で表現している。単一の方法ではなく複合的な方法を一つのお店の中で展開するのは、マニュアル的にも難しい部分があるとは思うのだが、その統一が図られている理由としては、やはり従業員がこのお店を愛することが重要なのであり、それがお店の魅力という無形の財産を築き上げる礎であることは間違いない。
日本的なサービスが「さりげなさ」であるならば、こちらは「わかりやすさ」。たまにはこんなサービスに包まれて、自分の中にある妙な思慮深さを開放するのもいいものである。
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