静岡・大井川鐵道を巡る「ひるたび・さんぽ」 ~後編~
旨いランチと郷土食フリークの皆様、ひるどきでございます!!!!!!
さて、現在のひるどき、順位はいかほどに?
※前編はこちらです。
静岡が誇るローカル線・大井川鐵道は、大井川本線と南アルプスあぷとラインという、まったく異なる二路線を運行している。で、あぷとラインの始発駅である千頭に到着。乗り換えをするべく向かったのは、
駅前に停車している一台のバス。実は現在、大井川鐵道は一部区間が工事中のため、バスによる代替運行実施中。ということで、このバスに乗ってあぷとラインの乗車駅に向かうことに。(夕方の一部時間帯は、平常運行中とのこと。)
バスが出発しようとすると、運転手さんから「後ろをご覧ください」というアナウンス。すると、たまたま特別運行していた列車の姿。乗りたいなぁ…と思いつつ、バスは前へと進む。
とはいえ、バスにだって趣あり。速度や高さが違うだけで、風景の印象はまったく違うものになる。約10分のバス旅行を経て、現在の始発駅である奥泉駅に到着。
郷愁感に満ちたホームも、
電車の出発まで待つことに、何のストレスも感じさせないほんわりとした駅舎もたまらない。建造物に対して嗜好がある訳ではないのだが、「これはいい」と素直に思ってしまう。
ここを訪れた方が、壁に貼り付けたツアーバッジの量が、この駅の存在意義を物語っている。で、電車の出発まで5分ほどになったので、ホームに移動することに。
大井川本線を走る車両は、他の私鉄車両を再利用したものだが、あぷとラインは独自の車両となっている。
少し高い段差の入口から車両に乗り込み、いよいよ出発。ちなみに、この日は空いていたので車両の右側と左側を行き来することもできたが、「右側の眺めがいい」とのことだったので、右側の2×2の対面座席に座る。
車両の中では、主要なスポットの手前から解説が入る。これがものすごく丁寧な内容になっていて、「あそこに○○がいますよ」といった、ピンポイントな話もしてくれる。
進む道は全て山道。なので、ガタンガタンと心地よいレールノイズが身体に響く。これがとにかく気持ちいい。大井川本線では窓を開けることができなかったのだが、この車両は窓が開くので、全開にしてレンズだけ出して撮影。
オレンジ色が鮮やかな橋も、
山の斜面から力強く垂直に伸びる木々も、そこに差し込む陽射しも、全てが癒しの要素になる。自分が死ぬまでに一度は乗って旅をしたい、カナダのVIA鉄道の車窓にも似た印象。
興奮しているうちに、あっという間に「アプトいちしろ」駅に到着。ここで、電車は数分間停車となる。その理由は…
ズンズンと近づいてきた、一台の車両。
これが、日本で唯一のアプト車両である。
この車両と乗ってきた車両を連結して、レールの真ん中にあるタイヤの溝のような突起と、アプト車両の下部にある突起がかみ合って、急角度を押し上げるというものである。登場の様はまるでサンダーバードのよう。
車体に描かれたこのマークが、力強さを感じさせる。個人的には、車体の赤、白ベースに黒いこのマークを組み合わせて、ラグランTシャツを作って販売するのも、まんざらでもないと思った。
そして、接続が完了し車両に乗り込んで再出発。
力強くて逞しく、ゴリゴリ進んでズンズン登る。こんな角度を気にせず登坂する車両は、圧巻の一言。
次の停車駅、「長島ダム」にてアプト車両の出番は終わり、切り離された助っ人は山の下へと戻って行く。
ちなみに、このマークもなかなかのデザイン力を発揮。知らない人にとっては、「正体が判らないけど、妙にとがった部分があるデザイン」という説得力あり。
この路線には、トンネルもつきもの。窓を全開にして、車内に響くレールノイズを体感するのもあり。
再びトンネルを抜けると山や空、雲や水、橋といった構築物が織り成す景色がばっと広がる。
列車は更に進み、水辺から離れて緑と茶色の光景へと変化する。
ここで、車内にある路線図を見ると…年季が入りすぎており、まるで東海道五十三次のごとく。字はかすれてお世辞にも見やすいとは言えないものの、逆に大井川鐵道らしさを感じさせる。
列車は、ターニングポイントとなる尾盛駅に到着。周りに住宅もなくお店もなく道路もない無人駅。でも、この駅がある光景には伝えたいものがたくさん詰まっている。
無人駅を過ぎると、目の前には渓谷にかかる一本の鉄橋。関の沢鉄橋の上に列車が到着すると、運転速度は歩くぐらいの速度になる。少しだけ身を乗り出して、下を見ると約100m下には川が流れていた。
山に山が重なり、列車は終着駅の井川に近づいて行く。
そして、タヌキが出迎える駅に到着。駅舎の外に出ると、周辺には何もなく背景には聳え立つ大自然のみ。でも、果てに到着したという達成感は、こんな光景じゃないと生まれない。
この路線のダイヤ編成は、1~2時間に1本といった間隔になっている。なので、帰りは電車ではなくJR静岡駅に向かうバスに揺られて下山することに。そこで腹ごなしをすべく駅の周辺を見回すと、一軒の、そして唯一のお店を発見。
おばちゃんが一人で山菜を下ごしらえしていたお店にて、真っ先に目に入ってきたおでんを注文。
とにかく、つゆに深い黒照りがある。伺うと、長年に渡っておつゆを継ぎ足しで使っているらしい。
味が凝縮された焦げが独特の味を生み出しており、大根にはそんな煮汁がしっかりと染み込み、たまらなく温かい味となっている。それは唯一無比のもの。
静岡行きバスの出発時間が近づいて、慌てて食べ終えてお皿のおつゆも飲み干す。正直、空気からもおでんからも、何よりおばちゃんの笑顔からも離れたくなかったが、お土産となる餡餅を購入してバスに乗る。
今度来るときは、この路線にある接岨峡温泉に寄る計画を立てて、もっとのんびりと過ごそう。帰りのバスに揺られながら、そう強く思った。
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