日本橋・Cucina Italiana La Fenice 魚と野菜のイメージが強いアオモリですが、実は肉王国でもあるんです!
7月に自分が参加させていただいた、青森食材の試食会in東京。その時は「七子八珍」という、地元でも珍しい食材を堪能することができたが、今回参加させていただいた試食会のテーマは「肉」。
考えてみると、日本には「肉も魚も野菜・果物も旨い」というイメージが固まっていて、しかも肉なら○○、魚なら△△、野菜なら□□といった具合に、しっかりと先発ローテーションが固まっている県というのは、自分でぱっと思い浮かばないように、ないのかもしれない。
逆に言えば、理想的なローテーションになっていないものの、食べてみると旨いものであるならば、それこそが「隠れた名品」となるわけで。
だから、そんなローテーション候補となる食材を食べない理由はない。というより、思いっきり食べてみたい。
ということで、自分にしても未知なる食材に会いに向かった先は、人形町にあるこのイタリアン。青森県出身のシェフが青森食材に自らの技術を宿しているお店だ。
そんなお店でいただく肉料理だからこそ、メニューを見た時点で、かなりこだわった足し算が施されているんだろうなぁ…という印象になる。
・青森県十和田湖ヘライファーム産ダチョウのカルパッチョ、大西ハーブ農園の香草サラダ添え、青森県八戸町産にんにくとバルサミコソース
オープニングは、ヘライファーム産のダチョウ。「ジビエしています!」というクセの強さだけが目立つ味の濃さではなく、濃密な赤身の旨みとダチョウ肉が持つ風味が、バルサミコソースの酸味とニンニクの香りと合わさり、入口と出口とで印象がクッキリと変わる二層の味へと構成されていた。そして、大西ハーブ農園のサラダ。ダチョウにもソースにも負けない爽快感と味の濃さはすごい。
・純国産バルバリー鴨『銀の鴨』の自家製スモーク サラダ仕立て、真っ黒フルーツにんにくのドレッシング
続いては、バルバリー鴨。フランスからやってきたひよこをスタートとして、生まれたのがこの純国産の「銀の鴨」。スモークによって凝縮された旨みが、思ったよりもあっさりとした口当たりから広がる。ちなみに、この銀の鴨は宮内庁御用の食材で、皇太子様と雅子様の結婚の儀においても、使用されたとのこと。
で、この鴨の味をいい意味で個性的にしているのが、真っ黒フルーツにんにく。海洋深層水に漬け込んで熟成させたこのニンニク、そのままで食べると甘さとニンニクの組み合わせに、不思議な元気が沸いてくる。
・青森県十三湖産天然『大和しじみ』と初雪茸の七戸町長芋の自家製ニョッキ、阿房宮菊と海鮮キャビア添え
実は、メニューを見た時点で一番気になったのは、この一品。長芋でニョッキを作るとは思わず、未知なる弾力が気になった一品。
しじみのスープの滋味深い味に茸と菊のクニャっとした食感。表面の張りからほろっとほぐれるニョッキが、不思議と「白ごはんとおかず」のようなバランスになっているのが面白い。ちなみに、キャビアはキャビアンヌという魚介エキスから作られたイミテーション的なもの。
・青森県脇野沢産猪豚の自家製ベーコンを使ったブカティーニ・アマトリチャーナ、パルミジャーノのフォンドゥータソース
太さとハリのあるパスタに、トマトやタマネギを溶かし混ぜたソースに、パルミジャーノを組み合わせた一品。このソースに旨みをふんだんに加えているのが、猪豚のベーコン。しっかりとかみ締めることで、ベーコンの肉汁がジュワっとあふれ出してくる。
・青森県産3種のブランド豚「長谷川自然豚」、「奥入瀬ガーリックポーク」、「南部赤豚」の炭火焼、青森野菜の炭火焼を添えて
豚肉の味を3種類の特性で決めるなら、「環境」、「エサ」、そして「品種」となる。
長谷川自然豚は、通常6ヶ月の飼育期間のところを10ヶ月とし、霜降り状態まで育て上げたもの。これでもかとトロっと脂が口で溶け出して、豚肉を食べたという充足度が高い一品。
奥入瀬ガーリックポークは、その名の通りエサとしてニンニクを与え続けることで、肉質をやわらかくし、マイルドな甘みが肉に備わることで、コク深いのものとなる。
そして、デュロックという品種である南部赤豚は、サシが赤身部分と綺麗に混ざり合っているので、脂は脂、赤身は赤身という具合にバラバラではなく、ハーモニーとして肉の旨みを楽しむことができる。
今回、リンゴで作った炭で焼いたものを食べていると、一口に豚と言ってもこれほどまでに個性があるのかと再確認。「こんなに違いがあるのなら、豚肉料理屋さんをやりましょうよ!」と思えたぐらいだ。
・青森短角牛「八甲田牛」のタリアータ、赤ワインとジョミ「ガマズミ」のソース、嶽きみと大西ハーブ農園のルーコラ、インカトマト添え
豚に続いては牛。100回噛まないと味を搾り出せないぐらいに、ぎっちりと赤身肉の魅力が宿った短角牛に添えられたのが、ジョミという酸味が強い果実のソース。
そこに、甘い嶽きみと濃厚な大西ハーブのルッコラ、そして、小さいボディに甘さがふんだんに詰まったインカトマトが添えられており、味のレンジが広い一品となっていた。
・青森県産ブルーベリーのレアチーズ、青森県産「シャイニーアップルジュース」のグラニータ添え、「緑の一番星」のクレームブリュレ
食後のデザートは、ベリーの酸味が手伝ってか、一気に食べてしまったレアチーズ、殻が緑色の卵・緑の一番星を使った、とてもとても味が濃厚なクレームブリュレ、そして普段飲みなれているシャイニーアップルをグラニテにしたもの。
一番驚いたのは、ゴクゴク飲んでいるシャイニーが洗練された姿に化けたことかもしれない。
隠れた名品を食べてみて思ったのは、生産量訴求をするか味の絶対値を訴求するかの違い。青森の場合は職人肌の生産者が多く、この地にいるとそんな食材に出会える機会が本当に多い。
多分、尊さを伝えることというのは、尊さと情報発信の結びつきが変な形になると、単なる商業主義に見えてしまうので難しいことだと思う。
でも、伝えるべきはこの部分。それが伝わることで、ローテーションは確固たるものとなり、すごいことになるはず。
自分も、普段は魚や野菜を食べる機会が多いのだが、これをきっかけにもっと地のお肉を食べなければと、改めて思った。