久しぶりに東銀座界隈を歩いていると、ふと思い出したのがコンワビルの地下にある、とんかつ屋さんのとんき(「き」は七が3つ)。この日は無事に壁にカキフライの文字が書かれた張り紙を確認。
無数のお客さんの姿を見つめているであろう張り紙には、シーズンが始まる度に画鋲で貼られるせいか、無数の穴が。
店頭の行列に加わり、先に注文を聞いてくれたのでカキフライをタルタルソースつきで注文。席が空くまで約6分、空いてからカキフライ定食が出てくるまで約5分。
ゴロンゴロンと俵型のカキフライが5個、その後ろには山脈のようにそびえる千切りキャベツの山。
しじみの旨みがぎゅっと詰まった味噌汁を口にして、俵の一つをおもむろに頬張る。少し厚めのガッシリ型の衣のザクっという音の後には、ぐにゅっというカキの弾力から、ワタのほろ苦さとコク、そして外套膜から染み出るような味が広がる。
薄い衣だと、カキと衣の一体感による味わいになるのだが、衣が厚い場合には、カキの味がどれだけ衣から飛び出してくるかがツボ。
そして、このお店のカキフライは二個揚げ。なので、ワタ部分と外套膜部分をいっぺんに食べつつも、まだ半分残っていれば、それはもう一度同じ味わいを楽しむことができるという至福になる。
こんなカキフライに欠かせないのは、
このタルタルソース。塩味とキュウリの瑞々しさが効いた味で、カキの味も衣の味もぐわっとパワーアップ。しかも、器たっぷりに入っているので、ケチケチしたつけ方ではなく、まるでカキフライをスプーンに見立ててアイスを食べるような具合に、たっぷりとつけて楽しむことができる。
画鋲の穴が増える度に、タルタルとカキフライの相性を楽しむ人の数が増えてゆく。そんな魅力もカキフライには宿っている。