東銀座・ぺるしぃ 一年に一度しか味わえないブイヤベース

24/02/2007東京,東銀座,フランス料理,よるどき

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ぺるしぃには、ここのところランチタイムよりもディナーで足を運ぶ機会が多く、今回もこちらの方からお誘いを受けたもの。ちなみに、この食事のきっかけは、その方がお店の坪井シェフから受けた、「私のブイヤベースを食べに来ませんか?」という、素敵な口説き文句。なんでも、このお店はブイヤベースを、年に一度しか作らないのだという。

最初にこのお店の名物である、しっとり旨いパンを食べる。ただ、今回は「あまり食べ過ぎないでくださいね」という、言葉を受け取った。さて、最初に運ばれてきたのは前菜のプレート。

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奥が、松葉カニの刺身・グレープフルーツ添え、カニコロッケのカニミソソース、そして、カラスミのソースが敷かれた蒸し卵。
蒸し卵は、スプーンで黄身と白身を、そしてカラスミソースを絡めて食べると、くっきとした濃度の諧調を楽しめる味わい。黄身の甘みに対するカラスミソースの更なるコク、この組み合わせを包むように、弾力に溢れた白身が存在感を出している。
次に食べたカニコロッケは、カニの旨みが高密度に詰まった味。ツボは、ベシャメル的な作りではなく、身の旨みを封じ込めた作りであること。また、カニミソのソースを絡めると…

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立ち上がりの早いソースの旨みとコクが、カニコロッケの味を更に力強いものにしてくれる。そして、カニの刺身は、新鮮そのもの。それもそのはず、この日の14時に到着の産直もの。殻から身をはがして、単独で食べるとやさしくクセのない甘みがじゅんわりと。そこにグレープフルーツを絡めると、酸味からの反動によって、甘みが更に強く感じられる。
ということで、今回のブイヤベースに使われる素材は、基本的に14時到着の産直ものがメイン。プレートの余韻に浸りつつ、パンの続きを食べていたら、大皿に盛られた今日の主役が運ばれてきた。

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実は、じっくりとブイヤベースを食べるは初めてなので、その姿に驚いた。イメージしていたのは、スープ仕立てのそれであったのだが、この店のブイヤベースは、マルセイユ風をアレンジしたもので、アメリケーヌ(甲殻類から作ったソース)をベースにしたソースに、魚や貝といった魚介類を絡めて食べるというもの。
サフランによる色が鮮やかな皿には、エビ、カニの爪、スズキ、アワビ・・・とにかく、具沢山。しかも、ボリュームもすごい。パンは控えめにと言われた理由にも納得。まず、このソースを口にすると、とにかく濃厚な味わい。ここでは、カニの殻を細かく砕いてオーブンで焼いたものを、じっくり煮込むこと約3週間。甲殻類特有の香りも、味わいとなりそして旨みとなる。
また、塩分の強さがここまでくると心地よさになり、ズドンとした力強さを感じる。「凝縮」という言葉がこれほどしっくりくるソース、まさに驚きしか感じられなかった。
色々な食材が乗るお皿なので、何を食べようかと迷ってしまったのだが、まずはエビやカニの甲殻類を食べることで、更に口の中を甲殻類モードにしてから、色々な具を更に食べ進む。

・あわび
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三陸産のあわびは小ぶりながらも、その弾力に溢れた身を噛むごとに、舌上にエキスが広がる。旨みがしっかりと詰まっており、ソースと絡めると、そのメリハリが楽しめる。

・スズキ
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島根県からの産直もの。冬のスズキというものに、抵抗感を持っていたのだが、これを食べて感じたのが、「あぁ…旨い」の一言。ふっくらとした身から広がるのが、上品な味と予想以上の脂。この身の旨みに加わるのが、皮のパリっとした食感。このバランスが申し分なし。
そして、これにソースを絡めると、素材の力強さとソースの強さが相まって、淡白な身による旨みと濃厚なソースによる旨みという、理想的な組み合わせとなる。

・しいたけ研究所のしいたけ
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このお店では定番となっている、「しいたけ研究所」のしいたけ。相変わらずグラマラスでジューシィな椎茸は、噛む楽しみと濃い旨みを与えてくれる。ソースの味の強さと、弾力の強さががっちり四つになった組み合わせである。

・大ハマグリとイカ
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大ハマグリは、くにゅくにゅくにゅくにゅ…という具合に、なかなか噛み切れない弾力の持ち主ではあるのだが、それゆえにエキスの持続性で楽しむことができる。また、イカも熱の通し方が申し分なく、濃厚な甘みが申し分なし。
いずれも、ソースとの相性も抜群であるものの、素材の旨みとソースの旨みが、ある種独立して感じるところに、素材とソースが別立てになっている意義を感じる。

・ほうれん草に包まれた、白身魚のすり身とホタテ貝
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フワフワのすり身とホタテ貝柱の芯の強さ。すり身の空気感の部分に、ソースが絡まるとソースそのものに軽さと+αの旨さが加わる。また、貝柱の甘さがソースと一体になったその味には、素材の力強さに更なる力が組み合わさった味。

・アイオリソース
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こんな豊富な魚介類を楽しむパートナーとなるのは、このアイオリソース。マヨネーズにニンニクを加えたものなのだが、ここではマヨネーズでニンニクを約1時間じっくりと煮出すことで、香りを含めた旨みをじっくりと引き出して、一体感を醸成している。
ブイヤベースの具に合わせると、マイルドな味わいになるのと同時に、ニンニクの香りが旨みを高めてくれる。もちろん、このお店名物のパンに合わせても、旨いの一言。

・デザート
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ブイヤベースのソースを、パンに絡めて堪能した後に運ばれてきたのは、この一皿。サフランによる鮮やかな黄色の次に、カシスソースとイチゴの紅によるグラデーション。このグラデーションを引き締めるのは、チョコムースの濃厚な茶色。
アイスの口当たりがやわらかい甘みと、チョコムースの濃厚な甘みは、メリハリを持った作り。そして、この甘みを生果実とカシスによる酸味が、食べやすいものとし、甘さを更に強調する作りとなっている。
一年に一度、まるで自分が向かい合ってきた全ての時間を込めて、シェフが作り上げられた味。そして、その味は食べる側にとっても、受け止めるには大きすぎるぐらいに、壮大なスケールとなっている。この味の真価を感じ取るには、もっと経験を積まなければと実感した夜だった。
そしてもう一つ、こちらの方からとあるものをお土産としていただいたのだが、これもある意味で自分の勉強不足を感じざるを得ない一品だった…

著者プロフィール

takapu

ごはんフォトグラファー/Local-Fooddesign代表
食にまつわる各種コンテンツ制作(フォトグラファー、エディター、フードライター、インタビュー)、商品開発・リニューアル提案、PRツール・ロゴ制作などを手掛けます。
創業75年以上の老舗食堂を紹介するウェブサイト百年食堂の制作・運営もしています。
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Posted by takapu