【おばんざいと串揚げ たくみ/埼玉県さいたま市】我慢の数ヶ月を乗り切った口開けはここに決まり!秋のコース料理が凄すぎました。
新型コロナウィルスに伴って、東京や大阪に出されていた緊急事態宣言も10/1をもって解除。飲食店では酒類の提供制限が残っていますが、暖簾をくぐって酒と肴のマリアージュを堪能した方も多いのでは。
そんなタイミングで「まずはここに行きたい!」と、頭の中で真っ先に浮かんだお店こそお気に入り。自分にとっては「たくみ」がそこ。下戸ルーツの自分にとって肴がおいしく居心地もいい。いの一番に訪れたかったお店です。
座敷席に腰を下ろすのも久しぶり。もちろん透明の飛沫防止パネルもしっかり完備。この安心感があってこそ、おいしく料理がいただけます。
普段なら1枚紙のおすすめメニューとレギュラーメニューで、肴とお酒選びに精を出すところですが、今日はSNSで見つけたこのコース料理に決めていました。
おつまみ、お刺身、魚料理に肉料理。シメのごはん。以前からこのスタイルがあればいいなぁ…と勝手に思っていたのですが、こういうタイミングで目の当たりにすると、「店行くぞ!」のスイッチがカチッと入ります。
まずはおつまみ3品。岩手県産の生牡蠣に、あん肝、そしてレーズンバター。あん肝のコクが濃密だったり、バゲットの上に座るバターが分厚かったり。久しぶりに外で食べる夜ごはんの見た目と味に、静かに感嘆していたのですが、
海の香りを海無し県に届けんとばかりに、生牡蠣のミルキーなエキスと磯の風味がたまらなかったんです。今年の牡蠣は走りの時期なのに大きいんですかね。iphone12miniサイズの結晶には、ギュッと旨味が詰まっていました。
やっぱり、外で食べるごはんって小さなイベントだよなぁ…と、久しぶりの感覚を、ハートランドと一緒に楽しんでいたらお刺身の盛り合わせが。12時の方向にそびえる中トロに始まって、イサキ、黒ムツ、ホウボウ、カツオ、オニカサゴ。どれもピカピカに輝いてます。
弾力プルプル、淡く上品な甘さ、脂のノリ、存在感のある色、香ばしさと風味の融合、全開にパワフルな脂のスケール。一切れが持つ個性が一同に介するお皿に会えるのは、お店でしか味わえない醍醐味。魚選びに厳しく愛情のあるご主人だからこそのセレクトが効いてます。
こうなると、ビールから日本酒にシフトするしかありません。夏営業のタイミングがなかった今年ですが、10月なのに暑いんですよね…となれば、出番を待ちわびていた夏向け日本酒と一緒に楽しむのが一番。
涼感のある名前の尾瀬の雪どけをまずは1合。もし自分が下戸の方に日本酒を飲むときに重視したいのが、飲みやすさ。辛口キリリもいいのですが、甘みの先に引き締まる感覚があるほうが飲みやすいんです。
清涼感があってスーッと広がる香りと、柔らかくナチュラルな甘み。喉を通るちょっと前にクッと引き締まる感覚が、魚の脂を洗い流しつつ華やかな余韻を残します。
この感じの日本酒って不思議と止まらないんですよね。で、ふわふわと心地よくなる。裏ラベルのとおり、やっぱり酒は心のワクチンなのかも。
お次はお皿からはみ出した秋刀魚。身のほぐれ感が心地よく、皮の下に閉じ込められた脂もしっかり。もちろん、焼き加減の良さが味の決め手。ワタもスダチと一緒にいただきます。
このコースの嬉しい点は、当日注文ができる上に内容の相談も相談できること。秋刀魚の代わりにオニカサゴとハマグリのスープ仕立てを作ってもらいました。貝の旨味が溶け込んだスープをこれでもかと吸った、蕪やしいたけ、弾力に富んだオニカサゴの身と一緒に。もちろんハマグリを噛みしめれば目の前はもう海です。
こういう組み合わせですから、あっという間に日本酒の1ラウンド目は終了。お酒に強い体質ならもっと飲みたいのですが、この後に控える料理に合うお酒をおかみさんに相談して、山形正宗夏ノ純米を半合注文。
そのお供はA5仙台牛リブロースステーキ。鮮やかな赤身とウニの眩しすぎるアイキャッチに箸が引き寄せられると、いやぁ、もう…たまらないしか言葉が浮かびません。
ジューシーな肉汁を際立てるウニのコクと塩味。これって調味料的ですね。「野菜と一緒に食べて下さい」と言われるままに、レタスや素揚げのれんこん、ナスと一緒に組み合わせを変えながら頬張れば、一口ごとにかすかに違う表情を見せてくれます。もちろん、どの顔も素敵なのは言うまでもありません。
締めくくりのいくらごはん。これもまた当然においしいんです。プチプチと弾けた先に広がるエキスが季節外れの花火のように広がって、コースのエンディングを彩ります。
行きつけの方はもちろんですが、それ以上に初めての人におすすめしたいベストセレクション。気前の良さと細部に行き渡った調理の技を、素敵なお酒とともに楽しめる。やっぱりここは、いいお店です。