神谷町・nirvanam(ニルヴァナム) カレーブッフェ(1,100円)
神谷町交差点から、御成門駅方面に向かって歩くと、とあるビルにデイリーヤマザキの看板と共に、インド料理店の看板を見ることができる。早速入ろうと思ったが、ビルの外側には入口がなく、普通のオフィスビルの入口から入り、階段を登って店舗のある2階へと向かう。
店内に入ると、温かみのある店内の照明と、大通り沿いに面した窓から射し込む日差しが、明るさの諧調を作り出していた。本当は窓側の席に座りたかったのだが、あいにく席が埋まっていたので、唯一空いていた一番窓から遠い席に座って、注文したのはカレーブッフェ。
金属製のお盆の上に、直径約8センチのターリー(カレーを入れる容器)を2つ乗せて、ブッフェスペースを見回す…カレーが5種類、チキンロースト、サフランライス、パン、サラダ、ドーナツ、デザートが置かれている…どれを選ぶか迷う…迷った末に、全種類食べることに。
・時計周りに12時の位置から「サンバール」、チキンロースト、サフランライス、「ケララポラタ」、チキンカレー
このお店は、北インド料理店ではなく南インド料理店。その代表とも呼べるサンバールとは、キマメ(樹豆)と色々な野菜を煮込んだスープ。野菜とココナッツミルクの甘さやコクが順々に広がるその展開は、いわゆるカレーとはかなり違う味。辛さの印象よりも、味の深さに対する印象が強い。
チキンカレーは、かなりマイルドな味わいに加えて、香草の刺激がしっかりと加わることで、メリハリのある味になっている。前者が飲みやすいカレー的料理なという位置づけなのに対して、こちらはイメージ通りのカレーといったところか。
チキンローストは、スパイシーかつジューシーな一品。カレーがマイルドかつサラサラした味なのに対して、こちらはがっつりとした立体感とボリューム感を与えてくれる。
これらを食べる際に組み合わせる主食は、サフランライスとケララポラタという、オーナーの出身地である南インドのケララ州のパン。金属製のお盆にカレーをかけると、かなりすごいことになりそうだったので、スープカレーのように、サフランライスをスプーンに盛って、浸して食べる。
一方、ケララポルタはナンよりも薄く、チャパティ的なもの。カレーをつけずに食べると、しっかりと粉のコクと、わずかにほんのりした甘さも感じる。これをカレーに浸すと、じんわりと染みこんでパンの旨さとカレーの旨さ。両方を感じるマッチングとなる。
・野菜カレー(左)ジャガイモと豆のカレー(右)
野菜カレーは、口に入れた際に強い香草感を感じ、ここからにんじんや玉ねぎといった野菜の甘さが広がり、口の中で味が入れ替わっていく。
一方のジャガイモと豆のカレーは、今までのサラサラなカレーとはうって変わって、ゴロゴロと大ぶりなジャガイモと豆がたっぷり。液体によるソフトな味わいから、しっかりと噛むことにより、具の旨みとスパイスが旨みが広がる。
・手前から「バダー」、マトンカレー、サンバール
バダーとは、ウラッド豆という豆を使ったドーナツ。さっくりとした揚げ面の食感とフェンネルの刺激から、ホコホコとした生地の食感になるという、変わった一品。ところで、このバダーはタミルナド州という州の料理。サンバールとの相性がいいということで、隣同士に置いてあるのだが、これを浸して食べると、ケララポルタとはまったく違って、豆のコクによってサンバールに足りない部分を補う組み合わせだと実感できる。
マトンカレーは、インドで一番辛い料理を食べる州だという、アンドラ州バージョンのもの。恐る恐る食べてみると、予想以上に辛さは抑え目で、むしろマトンのクニュクニュとした食感が心地よく、肉のボリュームと辛さのバランスが理想的。
・セモリナ粉が入ったコンデンスミルク
デザートは、セモリナの粒が入ったコンデンスミルク。やさしい甘みが複雑なスパイスによる刺激や味を、丸くしてくれる。
ターリーを使いまわさなければならないとか、ドリンクがブッフェなのに別料金という部分もあるのだが、あくまでも、南インド料理を食べに来るお店であって、日本で当たり前のブッフェシステムを食べに来る店ではない。
そんな些細な問題が気にならなくなるほどに、魅力的な南インド料理を選ぶ楽しみ、そして味わう楽しみがここにはある。