表参道をねぶたが駆け抜けた夜。表参道では青森レストランウィークも開催されていたものの、界隈の混雑を避けるためにiPhone経由でたどり着いたのが、一軒のお店。
店内に入ると、ご近所に住んでいると思しき方がカウンターを埋め尽くす。そんな中を、「横に並んで座ってくださいね」というお店のおねえさんの声に従って、あらかじめにんにくが入った醤油タレが置かれたテーブル席に腰かける。
お店の雰囲気に慣れたところで、iPhoneのブラウザでこのお店に導いてくれた、こちらの方がオススメしているメニューを中心に、色々と注文することに。
まずは、シュウマイ。薄い皮で綺麗に成形されたものではなく、ずんぐりむっくりと型崩れしている、いわば物体。なのに、ごろんと入ったシイタケのアイキャッチが、妙に魅力的。
にんにくタレにちょこんと漬けて、早速頬張るとこれがまたすごい味。整然とした美味しさではなく、家庭の食卓に上る旨さ。ほろっとほぐれる肉から溢れるエキスにシイタケのくにゃっとした食感も相まって、あっという間にお皿は空になってしまう勢い。
そんな中で運ばれてきたのは、豪快な豚足。そして、大量のニンニク。小皿に豚足を取り分けるにも、その重さで箸がつるんとしてしまうほどに重量感豊富な豚足は、骨がすっと取れるほどに柔らかい。これに生ニンニクを乗せて食べる。あぁ…すごい味。ある意味、エロスな味。思う存分にニンニクを乗せてしまいたくなるほどに理性が飛んでしまう。
そして、餃子。なんだかすごいことになっている。揚げ餃子でありながら煮餃子であり、脂感もある餃子。もしかすると、世界にもここにしかないのではないか?というぐらいに、独創性な餃子。これもニンニクタレに浸して食べる。小ぶりなので一口で頬張ってしまおう。衣のグシュグシュ感から、具と諸々が絡むと不思議な味。餃子の皮が吸った脂がすごいので、タレの表面に油膜ができてしまうという出来事もあるが、それも含めてこの味に触れることは貴重な体験。
そして、タンメン。まるで自宅でインスタントラーメンを食べる時のような、ダイナミックに盛られたキャベツや卵。ちょっと固めでちじれなしの平麺と、あっさり型のスープとの中間に、キャベツの甘みや卵のコクが入ることでバランスになっている。
麺ものをもう一品ということで、タンタンメンを注文、担々麺ではなくタンタンメン。だから、ラーメンにつぶ胡麻とラー油が入っているだけであっても、力業で成立してしまう。それがこのお店の魔力。
全部食べ終えてキラー通りに立ってみると、やっぱり違和感しか感じない。でも、お客さんはひっきりなしにやってくるし、2Fのテーブル席は「店の奥で開催されている賭けマージャンのシーン」みたいな雰囲気でもある。自分が薦めるお店というのは、旨いかどうかというのが基本線ではあるものの、このお店の場合は、「このお店を知っていること」を経験するおもしろさと、味の不思議なギャップを知ってもらいたいために、「まずは一度行ってみてくださいよ!」と、人にお勧めすることになるんだろうと思った。
ただ、青森に住む方にだけは「雰囲気は、王味みたいな店。」と言えば「あーあーあー」と、妙に共感してもらえるはずのお店。うん、共通語ってすばらしい。