青森県弘前市・しまや いつもの店の若生おにぎり

ナポリタンを食べて、シャーベットを食べて。
片仮名料理が続いたら、やっぱり恋しや津軽の味。
口の中で花開く爽やかな香りや、
特製の味噌がしっとり馴染んだ茄子の紫蘇巻き。
跳ね返さんとする弾力と、吸い込まんとする歯触りから感じる、
ツブと凍み豆腐の煮物の絶妙な味加減。
そして、シンプルイズベストなゼンマイと白滝の和え物。
気取ることないその姿は、まさに津軽の食卓に上る質実剛健な料理。
だからこそ、この店のカウンターに座ると、
家族と囲む食卓のように安らげるんです。
おかみさんは「鍋で煮るだけなんだから簡単だよ」と、何かの度に言うものの、
この色になるまで身欠きニシンに味を染み込ませるのは、
手をかけすぎない引き算の技術あってのもの。
夏の時期だからこそのいがめんち。
生食以外の食べ方で魚介を食べるときは、
旬にこだわるということに、無頓着になり気味ですが、
シーズンベストの理由を聞けば納得、美味しさに大満足。
イカの保存手段がなかった時代のごちそうに、感服するしかありません。
しまやが壁に掲げた黒板にオススメを書くようになってから、
結構経った感じですが、
そこに食べ覚えのない料理の名前を見つけたら、
注文しないわけにいきません。
そんな「肉汁」も、味がしっかり染みた日本酒指向の美味しさ。
たっぷり入った野菜のやさしさと、豚肉の甘みに包まれながら、
最後の一滴まで飲み干します。
シーズンの初物だという里芋の煮付け。
粘りを通じて、畑の歳時記が次のページに移り変わったことを感じます。
そして、〆めは若生おにぎり。
このお店が舞台となったJR東日本のCMで、
お客さんの女の子が食べているあれです。
「3つ行ってまれ!」と、おかみさんはエールを送りますが、
昆布の旨味を纏ったごはんを一口食べれば、5つぐらいいけちゃう美味しさです。
遠くに弘前ねぷたの太鼓を聞きながらの時間、
夏から秋への移り変わりを、五感で堪能させていただきました。