梅雨が明け、連日30℃以上の気温が続くと、
どうしても口元は酸っぱいものが欲してしまう。
特にお酢が効いた食べ物を一口食べると、
スキッと身体が目覚めるのを判っているから、
自分も、風呂上がりなんかにりんご酢を炭酸水で割って飲むことが多かった。
で、そんな7月のある日のこと。
こちらの方から、お酢の工場見学の話をいただく。
衛生が重視される発酵現場なんて中々見られるものじゃないので、
さっそく、お邪魔させてもらうことに。
都内で唯一、お酢を醸造している横井醸造。
高速沿いに見える「ヨコ井の酢」のメーカーさんだ。
前半は、三年発酵中の酒粕の保管庫や、
お酢の仕込み液に酢酸菌を入れて、醸している現場を拝見させてもらう。
ただならぬ蒸し暑さと、ただならぬ香りに包まれながら、仕込み液を一口。
パブロフの犬のように、よだれが止まらない。
そして、後半はお酢を使った料理のテイスティング。
横井醸造で製造しているお酢を使った料理を食べる。
定番のアジ南蛮や、カタクチイワシにお酢の効いた細切りショウガを合わせて煮た一品
(と、それをおにぎりの具として入れたもの)、あるいは白菜の甘酢漬け。
一口一口食べ進めるごとに、蒸し暑かった工場見学で溜まった疲労が吹っ飛んでいく。
効果が即効的に体感できるのが、心理的にも効く。
そして、この日の主役「真黒酢」。
液体を発酵させるのではなく、
固体発酵という製法によって生まれた黒酢だ。
注いだだけで、背筋がピンと張るような
強くやさしい刺激が鼻を刺激する。
酢酸特有の香りの後ろに、もっと厚いものが重なっている。
そんな感じのお酢のテイスティングに、
合わせる相方として選ばれたのが、
焼きたて熱々の餃子。
醤油の塩分もラー油の刺激も不要、
お酢の旨みが餃子の旨みと相まって、
さっぱりと口元に誘ってくれる。
それで十分な味。
この黒酢が調味料として、主役になることを教えてくれる。
ラベルにも書かれているのが、旨みというもの。
さっぱりすっきりはもちろんのことだが、
それ以上に凄さを感じさせてくれるお酢なんて、
なかなかお目にかかれるものじゃないと思った。