新潟県三条市・大黒亭松屋小路店 カレーそばと餃子
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
誰もが知る川端康成の名文は、
JR上越線の清水トンネルのことを記したものです。
東京から車で関越道を北上し、関越トンネルを抜けると、
雪とお米の国へとたどり着きます。
11月の澄み切った寒気の先、三条燕ICで高速から降りて、
三条市内に車を走らせること数分。一軒の食堂が見えてきました。
燕三条のエリアは新幹線の線路を境に燕市と三条市に分かれ、
隣接した市町村で、違ったご当地ラーメン文化が根付く珍しいエリアです。
燕市のラーメンは、地場産業である金属製品の工場が舞台。
腹持ちよく伸びにくするために麺は太く、
冷めないようにたっぷりの背脂でスープに膜を貼る。
出前で食べられていたこの形がスタンダード、
地域の気候風土と付き合う上で必然的に生まれたラーメンです。
一方、三条のカレーラーメン。とあるお店のご主人が、
東京の修業先から持ち帰って来たレシピが、地域に広まったというもの。
スープにとろみが入ることで冷めにくく、カレーのスパイスで身体もポカポカ。
燕と同じく地域の課題をクリアするためのメニュー。
ということもあってか、提供店舗数は30軒を超えています。
そんなお店の中から選んだのは、大黒亭というお店の松屋小路店。
隣にご当地スーパーがあったことも含めて、ここにしました。
もちろん、注文するのはカレーそばで決まりなのですが、
かつを乗せるか乗せないかで迷ったり、
あるいはサイドメニューをどうするか。
でも、初めての地で初めてのお店。
となれば、できる限り胃袋のスペースに収めるのが流儀。
ということで、普通のカレーそばとサイドメニューの餃子を注文しました。
最初に運ばれて来た餃子、ごろんとグラマラスな姿と焼き色。
サクッと香ばしい皮の食感、ジューシーでちょっと甘めの餡の味。
「サイドメニューでこれを頼むと、許容量を超えてしまうかも。」
と思って遠慮してしまうなら、旅先でそれはもったいないことです。
そして、カレーそばの登場です。
麺の姿が見えないカレースープを混ぜると、器の下に細麺の姿。
大ぶりのタマネギやチャーシューがゴロッと入るスープを絡め、
飛び跳ねないように集中して啜る。
手作りカレールーのスパイスが絡んだ旨口のスープを、
自家製麺の細麺に絡めながら啜る。そんな感じです。
一口飲めばじわっと温まり、食べるごとに身体の代謝が活発に。
汗と寒い季節とのギャップが心地よく、
最後の一滴までスープを飲んでしまうのは必然でした。
よく「食後感の佳さ」なんていいますが、
旅先の食後感は気候風土が特徴的な場所で
それにあったメニューを食べることで生まれるものです。
そして、環境で生まれる佳さを知ることが旅の目的ならば、
これを食べに行く理由に「わざわざ」が付くのは当然です。
そして、自分もそんなわざわざを繰り返すことになりそうです。