虎ノ門・峠そば 金目鯛そば(530円)
お昼休みの虎ノ門。
色々なお店が立ち並ぶこの界隈は、
数年前にあったはずのお店が姿を消し、
新しいジャンルのお店に模様替え。
そんなことが珍しくありません。
そうなれば、街には洗練された看板が増えるものですが、
だからこそ白地の暖簾に、「そばうどん」と力強く書かれた文字に惹かれるものです。
店内に入るといきなりカウンター。
そして、手書きのメニュー。
右から順番に冷やしのラインナップを追うと、
目に止まったのが金目鯛そばの文字。
煮付け?それとも?といった疑問をお店の方にぶつけると
「金目鯛の天ぷらです」とのこと。
となれば、興味は増してしまうもので、
これを冷やしで注文することにしました。
注文したそばをカウンターで受け取って、
その場でお代を払う。
左手には、出汁を引くのに使った大量のかつお節が、
サービスのおかかに姿を変えて、
箸で挟む度に小さな喜びが器の中に積み重なります。
ズズッと啜れば、出汁の効いた少し辛めのつゆの味。
そして、鯉が滝を昇るように、
ハリのあるそばが口を伝わって姿を消していきます。
金目鯛の天ぷらは、サクサクの衣に包まれた脂のコクとやさしい旨味。
立ち食いそばの組み合わせとしてはあり得ず、
しかも値段を考えれば、相当太っ腹。
あっという間に完食したのはもちろんですが、
この食後感は久しぶり。
手間と真逆のイメージがあるのが、
立ち食いそばの宿命ですが、
ここのそばは手仕事が積み重なった味。
狭い厨房での所作には、感動すら覚えます。
何を食べるか困った時に足を運びたくなって、
しかも毎日通っても飽きそうにない。
食後、24時間後の未来を想像して、
笑顔になってしまうお店って少ないものです。