銀座・ニューキャッスル 辛来飯(ツン蒲・840円)
「いつでも行けるから、今日はいいや。」
そんな考えでいるから、
お店が閉まった時に心の底から後悔する。
「いつ行こう?」
じゃない、今行かずにどうする。
「あぁ、行っておけばよかったなぁ…」
なんて、自分を主役にした三文芝居に浸ってるんじゃない。
横文字の花が可憐に咲く銀座に根ざした、
雑草のごとき逞しい外観。
窓際の席に座って、
大森、大井を通過して蒲田を頼んだけど、
もっとたっぷり辛さのシャワーを、
果物と野菜のスポットを浴びたくて、ツン蒲に切り替える。
半熟卵をスプーンで破る前に一口、辛い。
また一口、辛い、旨い。
舌が辛さとスパイスの虜になる、
舌の端から端をマントのように一瞬にして覆う。
一刺しも二刺しもする比類なき辛さは、いつだって全開だ。
だから、蒲田の先のツン蒲まで乗り越したい。
半熟卵の黄身を崩す、まろやかになる。
でも絶対に味は寝ぼけない。雨にも風にも負けない根っこがあるから。
白身と黄身をバランスよく…なんて考えるのは無粋、
むさぼれ、夢中でむさぼれ!
器が空になるまで一気に駆け抜けろ、
辛さと旨さの先を突っ走れ。
それが、この味を守り続けてきたお店に対する流儀だ。
食後はお水をぐいっと。
食べているうちに、1杯目が空になって、
ご主人に注いでもらう2杯目を。これが旨いこと旨いこと。
3.11以降、お店が地盤沈下してしまったことと、
建物の老朽化したのを理由に、ここで一旦幕を下ろしてしまう。
でも、味の記憶は緩まない、味への愛情が老いることもない。
帰り際に伺えたのは、
また、場所を変えてやるかもしれないという、
嬉しい一言。
銀座の地から辛さと旨さと居心地で、
昼の1時間だけオリジナルの世界に連れ行ってくれる。
そんなことができるお店、やっぱり思いつかない。
今月までだなんて、寂しすぎる。