年内のうちに、どうしても行きたかったモルチェへ。
明治屋の横にある階段を上がって、少し重い扉を開くと、窓越しに見えるのは、英国屋やティファニーといった、銀座を代表するお店の数々。窓際の席に案内してもらい、景色を楽しみつつメニューブックの中から注文したのは、お店の名物であるカキフライ。
値段も値段ということもあって、どんなカキフライが出てくるのだとうろ、期待で胸を膨らませながら待つこと約13分、運ばれてきたのは期待通りにボリューム感に満ちた一皿であった。
ナイフとフォークで二つに切って口に運ぶと、粗めのパン粉によるカラっとした食感から、驚くほどに力強い牡蠣の弾力へと展開する。
これは驚くほど旨い。一つ一つの部位の食感やコクといった個性が、全ていい方向で働いているのである。
一緒に出てくるソース類はウスター、タルタル、そしてレモンを入れて3種類。つまり、何もつけずに食べるのを含めて、4種類の方法で楽しむことが出来る。
タルタルの濃厚な味は、しっとりとやさしくカキフライを包み込み、かすかな塩味から玉子の甘みとコクに変化し、カキフライの味わいを深めてくれる。
ウスターソース。自分はカキの味が消えてしまうということで、この類のソースをつけて食べるということはほとんどやらなかったのだが、
これは、カキの味をしっかりと引き出すソースである。
自分がカキフライを食べていて一番楽しいのは、一つを頬張りながら「次はどのソースで食べようか…」と考えることである。
4種類の食べ方があると、どの食べ方で一番たくさん食べようかなんて考えてしまい、口の中に既にカキフライがあるにもかかわらず、頭の中では次のカキフライで一杯になってしまう。
そんなこと考えながら7個のカキフライを自分の思うがままに頬張る。そして、余韻に浸りながら、食後のコーヒーを口にする。こんな幸せ、なかなかありつけない。