銀座・モルチェ カキフライ(2,500円)
年内のうちに、どうしても行きたかったモルチェへ。
明治屋の横にある階段を上がって、少し重い扉を開くと、窓越しに見えるのは、英国屋やティファニーといった、銀座を代表するお店の数々。窓際の席に案内してもらい、景色を楽しみつつメニューブックの中から注文したのは、お店の名物であるカキフライ。
値段も値段ということもあって、どんなカキフライが出てくるのだとうろ、期待で胸を膨らませながら待つこと約13分、運ばれてきたのは期待通りにボリューム感に満ちた一皿であった。
ナイフとフォークで二つに切って口に運ぶと、粗めのパン粉によるカラっとした食感から、驚くほどに力強い牡蠣の弾力へと展開する。
これは驚くほど旨い。一つ一つの部位の食感やコクといった個性が、全ていい方向で働いているのである。
一緒に出てくるソース類はウスター、タルタル、そしてレモンを入れて3種類。つまり、何もつけずに食べるのを含めて、4種類の方法で楽しむことが出来る。
タルタルの濃厚な味は、しっとりとやさしくカキフライを包み込み、かすかな塩味から玉子の甘みとコクに変化し、カキフライの味わいを深めてくれる。
ウスターソース。自分はカキの味が消えてしまうということで、この類のソースをつけて食べるということはほとんどやらなかったのだが、
これは、カキの味をしっかりと引き出すソースである。
自分がカキフライを食べていて一番楽しいのは、一つを頬張りながら「次はどのソースで食べようか…」と考えることである。
4種類の食べ方があると、どの食べ方で一番たくさん食べようかなんて考えてしまい、口の中に既にカキフライがあるにもかかわらず、頭の中では次のカキフライで一杯になってしまう。
そんなこと考えながら7個のカキフライを自分の思うがままに頬張る。そして、余韻に浸りながら、食後のコーヒーを口にする。
こんな幸せ、なかなかありつけない。
さて、ここのモルチェは12月30日をもって、耐震工事のために半年ばかし閉店するとのこと。つまり、このカキフライに会えるのは、年内限り。そして、現在「カキフェア」と銘打って、カキピラフやカキグラタンを食べることができる。こうなると、閉店前に全種類を食べてみたいものである。
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今、牡蠣の業者が危機的状況を迎えています。きっかけは、皆様もご存知の通り「ノロウィルス」との関連性によるものです。
牡蠣の食べ方としては、生牡蠣や今回のカキフライ等、「生と加熱」に分かれることになります。前者の場合は、「生食用」という牡蠣を食べることになります。
これは、加熱によって菌を滅失するというプロセスがない分、多少のリスクを負うことになる食べ方なのですが、この種類は、保健所が定める指定海域にて養殖されるものなので、プランクトンや菌の絶対数が非常に小さいものとなっています。また、洗浄や消毒を施してから出荷されるので、基本的に安全なものとされます。
一方、カキフライに使う牡蠣は主に、「加熱用」とされているものです。これは生食用の海域に比べて、プランクトンが豊富な海域で育ったものであり、それと同時に菌を有する可能性も多少大きくなります。
しかし、加熱用という名称の通り、加熱することで有害な菌は滅失されるので、安全に食べることができます。(85℃以上の温度で1分以上加熱するすることで、菌は滅失されます)
ここ数日で、広島の漁協は生食用の出荷を取りやめたり、宮城ではノロウィルスが見つかった海域の牡蠣について、その出荷を取りやめることで、従来より更に高いレベルで、安全性を保つ活動を行っています。そして、この状態が続くことで、来年以降の牡蠣の成育活動に支障が生じることも考えられます(現に、卸値は従来の半分程度に落ち込んでいます)。
私はカキタベニストです。牡蠣の食べ方を遵守することを優先して、牡蠣を楽しみ続けることで、牡蠣の文化が発展することを望んでいます。
そして、もしよろしければ明日の昼にでも、タルタルソースをたっぷりとつけた、カキフライを食べてみてください。誇張ではなく、それによって牡蠣の文化は守られるのです。
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