【鹿/青森県青森市】謎めいたお店の単純明快においしいハンバーグ

26/11/2009青森,東北,洋食,よるどき

鹿の外観

青森に住んではや1年半。一応、それなりの数の飲食店に足を運んだものの、気になりつつも足を踏み入れてないお店がいくつかある。そんな一つがこのお店。

夜、自転車でこの店の前を通る度、煌々と輝く看板が目に飛び込み、黒塗りの車の後部ガラスについているようなカーテンで隠れた世界が、気になって気になってしょうがなかった。

鹿の外観

ハンバーグの店、鹿。何屋さんかは見ての通りなのに、やっぱりこの外観のお店に入るのは躊躇してしまう。だから、いつも自転車で前を通り過ぎるだけだった。

ところがある日、ある方にここの話を聞いてドアを開ける決意が固まった。ドアの向こうには6セットぐらいのテーブルとイス、そして厨房。華美な装飾はなくちょっと大きめのテレビが目立つお店だ。

鹿のメニュー

メニューには、思った以上に色々な料理が登場していた。

お店の雰囲気的にハンバーグしか出さないお店だと、勝手に決め付けていたのだが、これはうれしい誤算。そこで、もちろん、ハンバーグを注文したものの、定食にせずにご飯ものとしてエビピラフを注文してみた。

注文後、なぜか書棚に一冊だけ置かれていたカメラ雑誌を読みながら厨房に目を送ると、フライパンをゆする親父さんの背中が見えた。白いコックコートには、色々な調理の跡がしみ込んでいて、決して純白なんて言えるものじゃなかったが、逆にそれがうれしく感じた。

鹿のエビピラフ

先に登場したのはエビピラフ。ただ、明らかに炊いてない。つまり、エビチャーハンだ。さっきまで、親父さんがゆすっていたフライパンで炒められた一品には、細かく刻まれたネギが入り、気持ち大きく刻まれたハムが入り、小エビではなくエビフライ用のエビがぶつ切りに入っている。

決して銀座の洋食店で出てくるような洗練されたエビピラフじゃないが、家庭で食べているかのようにホッとする味。どちらかというとお店の味というより普通の味。でもこの普通が一杯詰まった一皿を食べ進めるごとに、お店の空気に染まっていく自分がいた。

3分の1ほどを食べたところで、ハンバーグが目の前に。

鹿のハンバーグ

肉汁がじゅわりと溢れる姿ではなく、ソースで覆われたハンバーグ。鉄板の上ではソースが焼ける音と芳ばしい香りとが一緒に踊っている。そこに添えられているのが、ニンジン、ホウレン草、そしてポテトという王道と言いたくなる3品。

割り箸を二つに割ってスッとハンバーグを切ってみると、肉の弾力で押し返されることなく、簡単に一口大に切れてしまった。これはふわっとと軽い肉と玉ねぎの塊だったのだ。

鹿のハンバーグの断面

口に運ぶまでに肉汁への期待よりも食感への期待が大きくなり、やっぱり噛むというより舌でほぐすという食べ方になった。なんとも不思議なハンバーグ、タマネギのシャリっとした歯触りの印象は残っていても、肉の食感が残らないというなんとも不思議なハンバーグ。そして間違いなく白飯が進む味だ。

エビピラフを食べながらハンバーグを食べる。いつの間にかこの往復が軽快に進み、一度もテレビを見ないまま、お皿の上は空っぽの状態になった。

鹿の色紙

お店の方に1000円札を渡す流れで、お店の名前の由来を伺ったところ、「それは、名字の一部なんです。」とのこと。外観の雰囲気から、鹿の肉を使うハンバーグのお店と思っていた先入観は消えてなくなり、一眼レフの取説の姿をちらっと確認できたことも含めて、自分にとってもう少し近づきたくなるお店になった。

ちなみに、このお店の営業時間は夜時間のみだが、閉店時間は朝の3時。きっと時計の針が進むにつれて、色々な青森の姿を垣間見ることができるはずだ。

著者プロフィール

takapu

ごはんフォトグラファー/Local-Fooddesign代表
食にまつわる各種コンテンツ制作(フォトグラファー、エディター、フードライター、インタビュー)、商品開発・リニューアル提案、PRツール・ロゴ制作などを手掛けます。
創業75年以上の老舗食堂を紹介するウェブサイト百年食堂の制作・運営もしています。
Local-Fooddesign

Posted by takapu