ひるどき青森シリーズ・その5 ~弘前・「しまや」で食べる、夜の郷土料理~
午後の仕事を終えて、ホテルにチェックイン。その後、夕食の時間までゆっくりしていたら、時計を見ると集合時間まで残り3分という非常事態発生。
ということで、慌てて集合場所に行きタクシーで向かったのが、この日の夕食の舞台となる、「しまや」というお店。このお店、弘前の繁華街から一歩奥まったところにあるので、初めて訪問する際にはタクシーが必須である(写真がブレブレだったので、どんな店の外観かを紹介できない自分が悪いのだが…)。
店内に入り、一番奥の座敷に案内されたところで、「今日は、ウチの料理を全種類食べられるようにしましょうか?」という、お店の方から嬉しい一言をいただいたので、コース料理的に構成されたものを食べることに。
最初の一品は、ナマコ酢。こちらは前日に食べたやわらかいフジナマコではなく、固めの食感のもの。これをしょうがと少しのしょうゆが効いた酢で、さっぱりと食べる。
ナマコも食べる数を重ねるごとに、なんとなくは特性らしきものがつかめてきたような感があるのだが、今のところは本体そのものの味の絶対値がそれほど大きくないので、酢や内臓和えのように、何とあわせるかによっての、味の変化幅が非常に大きい素材だというのが自分の印象である。
そして、同じタイミングで運ばれてきたのが、
・ニラの和え物
ほとんどニラなんですけど…旨いんです。という感じの味。シャキシャキと瑞々しいニラの甘みが強く、それほどに特長は出ていてもクセがなく、むしろ後味で口の中がさっぱりするという具合のもの。素材力の強さが味の強さにそのまま結びついている。
・ワラビと菊のおひたし
ワラビは自分もお気に入りの素材。表面がカシュっと歯に当たると、あとは粘り気と共に旨さのエキスが溢れてくる。これもさっぱりとした後味なのが、印象的。また、食用菊も弾力を持っていながらコリコリとした食感が広がる、食べていて不思議な感覚と楽しさを持った素材。
・みがきにしん、フキ、サトイモの煮付け
骨が多いのかと思いきや、これがものすごく食べやすい。それと同時に、噛んで噛んでまた噛んでという具合にかみ締めるごとに、魚のホロ苦く止められない旨みと、そこにいい具合に煮汁が絡んだ味が印象的。
・マグロの刺身
大間だったのか、それとも大間じゃなかったのかは別として、酸味も効いた赤身と適度な脂ノリの中トロ。最初のナマコ酢の時点からなのだが、この頃には益々ご飯が欲しくなっていた。
・凍み(しみ)豆腐、棒タラ、つぶ貝の煮付け
三者三様の具材は、煮汁との相性も少しずつ変化し、凍み豆腐であれば噛むと溢れんばかりではなく、溢れてくる煮汁の旨みを感じ、棒タラであれば、魚のエキスと一体になった煮汁の勢い、そして、つぶ貝であれば、うっすらと煮汁がなじんだ味が、コリコリした食感からにじみ出てくる。
・長もやし、ニンジン、油揚げの煮付け
長もやしは、一般に売っているモヤシより一回り以上細め。その代わり長さが2倍以上あるというもの。表面の張りが普通のモヤシより強く、それゆえに心地よい歯ごたえが楽しめる。噛んだ部分の体積は小さいのだが、濃厚な味は十二分。
・天麩羅(タラの芽、ししとう、ふきのとう)
季節もの3種類の天麩羅を食べると、旬を迎えたこともあるのだが、改めて青森はこの手の素材力が高いことを感じる。
・焼き魚(ハタハタ)
味噌が塗られたハタハタの身をほぐすと、
こんな具合に外観とのコントラストを帯びた身の白さが現れる。フワフワとやわらかく受け止める食感から、きりっとした旨みがにじみでて、これとくにゅっとした皮に馴染んだ味噌のコクが絡むと、どうしようもなくご飯が欲しくなる。
・おにぎり、味噌汁、赤蕪の漬物。
というタイミングで、ごはんものとしておにぎり、味噌汁、そして津軽名物の赤蕪の漬物が目の前に。おにぎりを割ると、そこからは
鮭が登場。表面が焼かれたことで生まれた香ばしさの心地よさと、ご飯の旨み。そして鮭の存在感が一体になったその味に、赤蕪の漬物が加わり、さらに味噌汁の温かさも加わることで、申し分ない味となる。
食べる数を重ねるごとに、津軽料理の魅力とその深さを感じるのだが、それは作り手の暖かさがそのまま伝わってくる料理であることが大きい。
このお店にも、料理を作られているおばちゃんと、えらく可愛い看板娘さんがいるのだが、人の魅力と料理の魅力が比例することを、しっかりと感じさせてくれるということが、郷土の料理を食べる他県の人間にとって、一番の目的であって、一番うれしいことなのだ。
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