八甲田山に咲く樹氷
八甲田山のロープウェイは、オンシーズンだけに満員御礼。スキーウェアに身を包んだ人でゴンドラは一杯となり、山頂までの約10分はまるで都内のラッシュのよう。
でも、山頂駅に到着した瞬間、そんなストレスは一気に吹き飛んでしまう。冷たさが心地よい空気に当たりながら、はるか向こうに見える岩木山の出迎えを拝むと、感嘆の声しか出ない。
その周りに咲き乱れる樹氷の姿、ひとつとして同じ形がないことに、自然の偉大さとか自然がどうしたとか、普段忘れている自然賛歌を声に出してみたくなる。
むつ湾側を望むと、まるで青森の立体地図。二つの角が湾を包みこみ、普段よく姿を見るアスパムですら豆粒のようだ。
曇り空に、うっすらと太陽の光が差し込んでいる。青と白のコントラストではなく、白のグラデーションを光が演出している。
ロープウェイ駅から歩ける範囲は思いの他広く、スノーシューがあれば便利なんだろうなぁと思いながら、ズボズボと降り積もった雪の中を歩きまわる。
近づけば、細かい雪の粒に反射するやわらかい光。八甲田山の象徴は思いのほかやさしい姿をしていた。
でも、今年の青森はここ何年とない小雪。だから樹氷の姿はいつもの姿と違うらしい。
市街地の雪が少なくなり、生活ロスも減ることは個人的には大歓迎。でも、温暖化で樹氷という自然の神秘が見られなくなってしまうのであれば恐ろしく、冷たい山頂の風がますます愛おしく感じた。