私が以前に住んでいたのも、よく足を運んでいたのも、
青森県の真ん中から左側の津軽地方。
車で2時間以上かかることもあって、
南部地方には特別な用事がないと行くことが少なく、
実は40市町村あるうち、まだ足を運べてないのはほとんど南部側でした。
そんな中、自分にとってのいわば「青森の隙間」を、
埋める旅の機会があったので、八戸に降り立ちました。
最初に向かったのは、青森県南部町。
最初の目的地までやや距離があったので、
産直に立ち寄って腹ごしらえすることに。
第一次産業王国の青森には、
イメージどおりに産直が豊富に点在しているのですが、
産直マップを見れば、南部地方も例に漏れることはありません。
ということで、やってきたのは名川チェリーセンター。
ログハウスのような建物に、古き時代のフォントがある種の味わいになっています。
元々、今の南部町は旧南部町と旧名川町、
そして旧福地村の3町村が合併したもの。
そのうち、さくらんぼが特産品だった(もちろん、今もです)
名川町では、産直にチェリーセンターという名前をつけました。
とはいえ、時期的にさくらんぼを期待するには、
いくらなんでも早すぎました。
ということで、出迎えてくれたのは、
真っ赤に染まった完熟の紅玉や、
やませの風が水分を持ち去った寒干大根。
煮物にすると独特な食感が加わるので、
これを目にするとつい手にしてしまいます。
中に入ると、そこは惣菜天国。
南部地方ならではの手作りお惣菜が、
所狭しと並んでいます。
南部地方の定番おやつ、
じゅね(えごま)の味噌をたっぷり塗った串もち。
もちの種類には、麦もちと蕎麦もちがあって、
意外に推しモチは分かれるそうです。
その隣には、豆しとぎ。
米粉にすりつぶした大豆を合わせた、
素朴な味の逸品です。
特産品の菊・阿房宮。
この綺麗な八角形は、菊を乾燥させる際に使う、
ざるの色なんだそうです。
で、腹ごしらえに買ったのは、
南部せんべいの間にごはんを挟んだ、
「こびりっこ」。
お赤飯が入っていることが多いのですが、
この日の中身は栗ごはん。
ふかふかの栗の香りが、
せんべいでぎゅっと封じ込められていました。
やっぱり近くのスーパーより、
遠くの産直のほうが胸が高鳴ります。
それはきっと、未知なるものへの期待感に加え、
干し大根やこびりっこの味のほうが、
スーパーの食材やお惣菜よりも、
作り手の温かさが身近に感じるからなんでしょう。
ところで、南部地方の一部のエリアでは、
美味しいモノの味を
「くるび味」と呼ぶそうです。
くるびとは、くるみのこと。
貴重なタンパク源だった山の宝に敬意を表した、
素晴らしい言葉が今でも残ってるのって、すごいです。
自分もこの旅で、
一つでも多くのくるび味に出会いたいものです。
