今年の弘前公園には、桜色の絨毯が敷き詰められていました。
急激に気温が高まったこともあって、
弘前ではゴールデンウィークの中頃に、
桜の満開を迎えましたが、
その2日後、雨と風によって花びらは舞い散り、
お濠を桜色に染めることになりました。
数年前にも雪見桜ということもありましたが、
いつもは、お濠に立ち並ぶ桜を見て春の訪れを実感するのに、
今年は、春のフェードアウトを感じることになりました。
そんな具合に、目で感じる春には少し出遅れてしまったのですが、
舌で味わう春には間に合いました。
やっぱり三忠食堂の津軽そばは欠かせません、
ふわっとしたおそばの口当たり、
焼き干しの優しい出汁の味。
りんご印のカップ酒の器を、
お水のグラス代わりにするのも、
やっぱり弘前の祭りならではです。
三忠食堂のご主人ともお話したのですが、
最近のさくらまつりには、色々な露店が立ち並び、
焼そばやたこ焼きといったスタンダードに対して、
変わり種系の屋台も増えてきました。
正直、三忠のように10年、20年先にも
根付いているかどうかは分かりませんが、
これも一つの流れなのかもしれません。
ただ、新しいものがあるからこそ、
昔から愛されているお店の価値が相対的に評価されるのも事実。
やっぱり、普遍的な美味しさは本能に絶対的な記憶を残します。
ところで、お祭り広場名物のお化け屋敷や、
オートバイサーカスの二大興行は健在。
お客さんの悲鳴や歓声が外に響いてきますが、
そんな音も弘前の春の風物詩。
ここから石場家住宅の方向に歩いてみると、ここにも桜色の絨毯が。
この佇まいとマッチしているのは言うまでもないのですが、
いつもは空を埋め尽くさんとする桜が、
マーブル模様のようになっている眺めも、
春ならではのものです。
今年は、弘前市役所が屋上を解放していたので、
絨毯と新緑の育みを眺めることになりました。
とある方に伺うと、
この取り組みは市の若手職員の方が、
市長に提案したということです。
シンプルなのに素敵なアイデア、
企画そのものの形にこだわるのではなく、
見たいものとアイデアを最短でつなげた結果。
桜色が彩られる眺めに出会えることが、今から楽しみです。
屋上から1階に降りると、市役所の前には大量の幟。
白とピンク色のチェッカーフラッグは、
青森スマートドライバープロジェクトのシンボルでした。
交通事故を減らし運転マナーを向上させるこのプロジェクト、
この日はスタートキャンペーンだったようですが、
ここにも弘前市長が参加していて、行政と市民との距離が近いことを、
改めて実感することになりました。
今年の弘前の春は、一人一人にとっての春の過ごし方を、
見つめ直すきっかけだったのかもしれません。
咲き誇る無数の桜はもちろん素晴らしい眺めですが、
一本の木に胴割れで花を咲かせる姿は、
この桜が自分にとっての春なんだと、
少し身近な存在になってくれます。
多くの人が同じ景色に身を置きながら、
違った視点で同じ時間を過ごす。
もちろん、咲き誇る桜の美しさに立ち会うのは最高の瞬間です。
ただ、桜が満開だという情報を目で確認するのではなく、
人やムーブメントが芽吹き花咲く春に会うことも、
弘前の春に宿る一つの特長なんでしょう。