神楽坂・2丁目食堂トレド トルコライスの夜
ある日曜の夜、飯田橋界隈で夕食のお店を探してました。
ただ、飲食店は閉店時間を迎える頃。
開いてるお店は居酒屋さんばかりで、
がっつり食べたい気分とはミスマッチ気味。
そんなときに見つけたのが、このお店。
店頭にズラッと並んだ手書きのメニュー、
緑色のファサードに描かれた「二丁目食堂」の文字。
もう、ここに決まりです。
ただ、外から後片付けの様子が伺える
店内に入れるかが問題でした。
「まだ…よろしいでしょうか?」
「あぁ、いいですよ。どうぞどうぞ。」
日曜日のこの時間に、二人客が来るのは珍しいようで、
カウンター席に腰掛けることができました。
どうやら話好きで野球好きのご主人。東京ドームの帰りだという会話から、
昔、後楽園球場で王貞治の800号ホームランを撮り損ねたとか、
神宮球場のすり鉢状ゆえの開放感、
がんばれタブチくんでの広岡監督やヤスダの話などなど、
昭和系の野球談義に花が咲いたものです。
もちろん、その間も料理のスタンバイは進みます。
一旦冷めた揚げ油を温め直す間、
フライパンがパチパチと音を発し、お皿やキャベツが整う。
カツが油に投入されると心地いい高音が奏でられ、
カレーの香りが立ち上る。
「名物」と誉れ高き継ぎ足しカレーの単品と迷ったのですが、
トルコライスを注文しました。
トルコライスは、定義や発祥に諸説ある食べ物ですが、
ここのはカレーに、チキンカツ、そしてナポリタンのトライアングル。
ちなみに、花巻のマルカンデパートでナポリカツは経験済みですが、
トルコライスは初めてです。
まずはカレーから一口食べると、
ソースのコクとじんわり響くスパイスの活力。
でも、刺激押し系ではなく濃厚旨み系のカレー。
このバランスこそが食堂カレーの正義。
初代継ぎ足しカレーの歴史は
一度2009年に40年の歴史が途絶えたそうですが、
2011年4月から再びスタートしたカレーでも、
寝かしの美学がぎっしり詰まった味でした。
お次はチキンカツ、上にはケチャップが注がれています。
揚げたて大ぶりをほお張れば、軽快な音と共に肉汁が溢れ出す。
もちろん、カレーソースを絡めて食べれば、新しい美味しさが生まれます。
これが、トルコライスの醍醐味なんでしょうね。
そこに炒め系のナポリタン。
シャキシャキの野菜とムチムチのスパゲッティが、
ケチャップソースをしっかり纏い、
くるっとフォークで回して食べれば、
直球ストライクの味が口に収まります。
あとは、口の中に蓄積された洋食舌が味を膨らませるばかり。
いわば洋食オールスターズたるトルコライスは、
子供にとってのお子様ランチなんでしょう。
野球も球団ごとのカラーという伝統を重んじるものですが、
食堂も伝統を重んじるもの。
例えば、カウンターの椅子は40年前から使われているものがリペアされたもの。
カウンターとの絶妙なバランスこそが居心地の良さに。
若い世代がそんな味や居心地を経験し、後世に伝わって時代ごとのベストが残る。
食堂とは世代の交差点なんだと改めて感じた夜でした。