高松・いただきさんの海鮮食堂 イワシの煮付け、本ヨコワのたたき、ごはん(中)、味噌汁(860円)
うどんを食べた後に向かったのは、オレンジ色の看板がまぶしいこの食堂。ここは、向かいにある卸売市場の方が中心となり、3時間だけ営業している、ランチ専門的な食堂である。先に食べたうどん屋さんの目の前にあるものの、間には川が流れており、対岸に行くには150m先にある橋を渡って、150m戻ってくる必要がある。
この店名である「いただきさん」とは、リヤカーやカゴをつけた自転車といったもので、魚を売り歩く女性のこと。時にお客さんの相談相手にもなったりもするので、いわば、街のお母さんといった存在か。
ただ、このスタイルで行商している人の数は、現在ではかなり少ないとのこと。100%の形で残すのは難しいかもしれないが、お客さんと深くつきあって商売を行う心は引き継がれて欲しいものである。
そんないただきさんの名前を使った食堂に一歩足を踏み入れると、そこは…
海の男らしさに満ちた空間となっていた。
さて、このお店はセルフサービス。お刺身や天麩羅、フライに煮魚…といった具合に、昼のピーク時間には棚にずらっと並んでいるとのことだが、
あいにく、うどんを食べていたらピークの時間を過ぎてしまい、いくつかの品が残るだけとなっていた。しかし、「値札が置いてあるものだったら、言ってくれれば作るよ」という、嬉しい言葉が。ということで、棚からはイワシの煮付けをお盆に乗せて、お刺身として…
という、妙に気になる品を注文。ちなみに、これはオススメを聞いた際に、おじさんから推奨されたものでもある。ふぐ刺しも魅力的ではあったが…で、作りたてのお刺身をお盆に乗せて、ごはんの中サイズとワカメとアサリの味噌汁も注文。しめて(確か)860円也。
まずは、イワシの煮付けから。
固い背骨を包むように、凝縮された身からは噛めば噛むほどに旨みが増して、いつしか背骨もやわらかくなるので、身と骨が一体になったまさに骨のある味。
ショウガで青臭さを消している以上に、この身からは臭みは感じられず、香りだけが口の中に広がる。身は小ぶりなだけに脂感は薄いのだが、新鮮なイワシを使わないと出せない味がこの皿にはある。
次に、ヨコワのタタキ。これは、テーブルに備え付けの刺身醤油で食べる。
ヨコワとは、本マグロの若魚を指す関西での呼称のことで、関東では「メジ」になる。その味は、くせなくさっぱりしていながら、旨みはしっかり持続する。もちろん、血合いの部分も濃厚かつ豊かな弾力。
また、薬味であるニンニクやショウガを乗せて食べると、
反動がついて旨みの力が増す。個人的には勢いがつくニンニクより、味を引き立てるショウガのほうが好み。
この2種類のおかずで食べるごはんも、少し固めに炊かれており、しかも茶碗にぎっしりと詰まっている。山盛りのインパクトもいいのだが、このぎっしり具合のインパクトは、ボディブローのようにじわじわと押し寄せてくる。でも、やっぱり主役は魚の旨みなのだが。
現代のいただきさんとも呼べる、魚の素晴らしさを伝えるこのお店は、地元に根付いた文化を色々な角度で活用することで、後世にしっかりと残そうとしている。そして、そういった意識こそが、地元を元気にするのと同時に、地元の無形文化をしっかりと根付かせるのだと、帰りの電車で色々考えてみた。
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