【埼玉県さいたま市】住宅地で町蕎麦の暖簾を掲げて約半世紀。与野『山茂登』の冷やしスタミナそばとカレー南ばん
浦和と大宮の間に挟まれた与野駅の周辺で、意外に見かけるのが蕎麦屋さん。敷地内に製粉所を構える高級店から、日常の風景に溶け込んだ町蕎麦まで。色々なスタイルを通じて近しい存在として親しまれています。
そんな町中の住宅街にたなびいていた白い暖簾。少し色あせた文字は日々の営みを全力で積み重ねてきた信頼の証。レールを動く開き戸のカタカタ音に包まれながらお店の中へ。
御用命は(833)一二〇二番。出前を取ることが人気だった時代から年季を重ねたお品書きにズラリと並ぶ料理の数々。
そば・うどん、季節もの、中華、ご飯もの。当然、最初はそばからと行きたいところですが、素敵な誘惑が多すぎるんです! 具のバリエーションだったり、町蕎麦のカレーならぬラーメンだったり。想像を超える定番のおいしさを重んじるか、想像がつかない一品への驚きを優先するか。
出した答えは夏らしく冷やしスタミナそば。味付けしっかりを約束する色に染まった薄切り豚肉と千切りのきゅうり、そしてピンクが目を引くたっぷりのなると。冷やし中華をアレンジした装いですが、ボリュームが食欲を掻き立てます。
しっかり引き締められた蕎麦がハリの良さを残しつつ舌を走り、クミクミとした歯ざわりから広がるそば粉の香り。ここに豚肉のエキスが絡まればズッシリした旨さのできあがり。爽やかなきゅうりとなるとの食感が際立てます。
そんな麺を染めるつゆは、冷やし中華の酸味系ではなく甘めのかえしが効いたかけそばスタイル。タヌキでよしキツネでよし、冷やしを受け持つ万人向けの味が心をギュッと掴みます。これ、飽きがこないタイプなんですから。
で、数カ月後に間違いなく恋しくなるのがカレー南ばん。カレーのつゆに入る具は豚肉と玉ねぎだけ。
そばを啜れば、舌先に感じるのは豚肉の旨味とカレーつゆに溶け込んだかえしの甘さ。喉奥にジーンと響くカレーのスパイシーな刺激の中で、ネギのフレッシュな存在感がいい仕事してます。
一分の隙なくカレーが絡んだ細いそばを食べ進めているうちに、ジワジワとそばがき寄りに固まるのですが、それもいいんです。跳ね飛ぶ心配はなさそうですし。なので白ワイシャツでもおススメです。
「あ、次はカツ丼がいいなぁ…どんなスープが出てくるんだろう」なんて食後に思ったのですが、タンメンも気になるところ。
そんな色々なメニューを通じて町の生活に味わい深さを作り出してきたお店は、なんと約半世紀をご夫婦一代でやってきたとのこと。一年でも長くと思いつつ、もっと頻繁に通わなければと思わせてくれます。