銀座・花大根 伊勢うどんと牛すじ煮込み(800円)
最近、東京でも地方の伝統料理を、
メニューの目玉に据えるお店が増えてきてますが、
料理の特長を掴みきれてなく、
結果として単に名前を使っただけ的な料理
(自分は「ビジネス伝統料理」と呼んでます。)
というものも増えているように感じます。
そうなってしまうと、
東京生まれ東京育ちな人にとってみれば、
その料理を食べた際の印象が基準になってしまい、
地方に行った際にギャップが生じ、
(基本的に地方で食べれば、上方修正されることが多いのが幸いですが)
その地域出身の方にしてみれば、「本当の味じゃない」とジャッジされてしまう。
対象となる料理に欠かせない特長を理解した上で、
あえて新味を追加して創作するのであれば、
受け継がれるメッセージは多くの方に届くのですが、
それがないとメッセージは届かない。
自分が知っている地域の料理で、
そういうものが出されているのを知ると、
一層の悩ましさを感じます。
ところで、ある日のお昼のこと。
数年ぶりに伊勢うどんを食べに銀座へ。
前は、池尾という名前の伊勢うどん専門店でしたが、
今は地下の花大根で伊勢うどんを食べることができます。
もちろん、注文したのは伊勢うどん。
副菜が野菜か牛すじ煮込みの二択だったので、
牛すじのほうで注文しました。
主役よりも、副菜のボリュームに驚いてしまったのですが、
大きな器に目を移せば、タレが底に沈んだ太いうどんがたっぷり。
そこに、温泉たまごが添えられているので、
底にたまったタレと一緒に混ぜると、
うどんに絡むタレの味はマイルド系に。
ふわふわの口当たりが心地よく、
啜るというより運ぶといった塩梅で、
胃の中にゆっくりと降りていく。そんな感じです。
で、ふわふわの後は、
しっかりした食感の牛すじ煮込み。
こちらは味が濃いめに入っているのですが、
伊勢うどんとの相性がよく、
交互交互に食べれば、気分は伊勢うどん定食な感じです。
ヘビーにお腹いっぱいというよりは、
男性的には腹八分。そんな感じの胃心地でお店を後にしようと思ったら、
「今お使いになった箸をお持ち帰りいただけます。」
大好きだったこのサービス。
当時は青いお箸だったのですが、
コレクションに黒い箸が加わりました。
でも、何よりも伊勢うどんの美味しさと特長が、
10年前から今も変わらず東京で提供されていることに、
嬉しさを感じたのでした。