青森駅から東に伸びるニコニコ通り。駄菓子屋さんやりんご屋さん、そしてお気に入りの珈琲店が立ち並ぶ一角を歩いていると、青森にいることを実感させてくれます。
そんな商店街の先に見えてきたのが海坊厨。緑色の屋根に描かれた金色に輝く文字が目印です。
お昼のピークタイムを少し外したつもりでしたが、店内にはお客さんがぎっしり。3〜4人がけのテーブルで食後のコーヒーを楽しむ姿がチラホラと。
ラーメンにカレーにナポリタンのような、幅広い年代に愛されるスタンダードメニューから、タコライスやカツサンドまで。海鮮創作の看板どおりにアレンジが施された料理の数々に、いつもメニューチョイスに迷います。
で、今回注文したのは海坊厨丼。生と炙から生を選んでみました。
メインディッシュの登場前にテーブルを彩るのは、サラダとホワイトポタージュ。そして醤油と橙と出汁のジュレ。
そこに、どーんと目の前に登場したのは、たっぷりの海の幸が白ごはんを覆った器。サーモンに白身に中トロの炙り。頂上にはウニやタコ、オレンジ色のとびっこの姿を確認。緑のアイキャッチも効いていて、まるで海鮮丼というよりも海鮮島です。
甘めの醤油タレを絡めて食べれば、プリッとした弾力の良さから溶け出す豊富な脂。素揚げやコショウの刺激が全体を軽やかに仕立てます。刺身一切れの厚みも他の海鮮丼の倍以上、つまみとしても楽しむにも圧倒的なボリュームに、日本酒が恋しくなるってものです。
半分ぐらい食べたところで、ジュレを絡めて味の進路を方向転換。さっぱりした口当たりから出汁がじんわりと溶け出すと、同じ刺身が持つもう一つの表情が垣間見えます。
食べ進めるうちに、ごはんの上には温泉卵を発見。箸で割ってトロリと流れ出す黄身を絡めれば、味の掛け算は増える一方。一つの丼の中で色々な組み合わせが自由に楽しめるのが魅力です。
「何が食べたいってハッキリと決まってないけど、あの店に行ったら美味しいものがあるから」
そんなときに浮かぶ店こそ、きっと自分の中に欠かせないお店。海坊厨にはそうした気分に応えてくれる安心感があるんです。