渋谷 d47食堂 山口定食(1,470円)
練馬方面から渋谷にアクセスしやすくなって約2ヶ月。
その恩恵を存分に受けるべく、
渋谷に足を運ぶ頻度が高くなっています。
大体の目的地は渋谷ヒカリエなのですが、
まだ足を踏み入れてなかったフロアが一つ。
スーパーマーケットの展覧会をきっかけに訪れたd47食堂。
d&dには幾度となく足を運んでいたのですが、
全面ガラス張りの窓からの眺めと、
カリモクの座り心地に癒されました。
ここは選び抜かれた日本の佳き料理を提供するスペース。
だからメニューにも食材や調理法が丁寧に記され、
地域食文化への尊敬が端々から伝わってきます。
そんな中で気になったのが、期間限定で提供されていた山口定食。
山口県岩国市の伝承料理「岩国寿司」と「大平汁」がセットになったものです。
シンプルの中に可憐な花が咲く。
そんな感じのお膳が運ばれてきました。
大平汁は、鶏肉にしいたけや里芋、こぼうなどの具が、
昆布とかつお出汁のつゆに浸かっています。
元々、大きく平らな器で作られた料理を、
一杯一杯取り分けられていたことが由来の一品、
なので、どちらかというと煮物に近かったようです。
そんなあたりが津軽の「けの汁」と共通している。
と、勝手に共通点を見出すことも楽しかったりします。
あっさりとした口当たりから、
色々な旨味が折り重なったやさしさに満ちた味。
初めて食べたのに懐かさを覚えたのは、
きっと日本人の遺伝子にとって普遍的な美味しさが
たっぷりと溶け込んでいるからなんでしょう。
そして、岩国寿司。
岩国は瀬戸内海に面した地理環境にあって城下町。
かつて岩国藩が統治していた時代、
山の上に建つ岩国城まで
これが献上されていたとも言われています。
米、蓮根、野菜、近海で獲れた魚が入り、
大きな寿司桶でぎっちり固められたちらし寿司は、
今でもハレの日の料理として食べ継がれています。
錦糸卵に椎茸、そしてでんぶに酢漬けのレンコン。
保存食の色合いもあったからでしょうか、
現代的海鮮ちらしとは真逆の具材。
でも、それがいいんです。
箸で一口大にしようにも、なかなか解れないのが個性。
一口にたどり着くまでに歴史を感じ、
一口目の味には春の爽やかな空気が流れていました。
日本の食事は食材とそれに合った調理方法、
それらが組み合わさった時に生まれる、いわば和色がごちそう。
だから、地方の伝承料理は色の記憶のリレーなんです。
そして、これは簡単に絶えてしまうものなんです。
でも、このバトンは日本の宝。
今の渋谷の街に似合わない料理なのかもしますが、
渋谷だからこそリレーが行われる意義も大きいと思います。