高松へ、徳島へ、瀬戸内へ。 〜その4 高松市 遊 瀬戸内の魚と讃岐の野菜。そして、素麺。〜
謹んで、新年のご挨拶を申し上げます。
このブログも、おかげさまで9年目を迎えることができました。
本年も自分にとって最も縁深い青森を中心に、
様々な地方で育まれる食材や脈々と活きる食文化、
あるいは東京のランチなどを記すことができればと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
ということで・・・去年の9月に四国を旅した際の話に戻ることに。
徳島のコーヒー文化をハシゴした後、
レンタカーを高松駅前に返して、
「ことでん」に揺られつつ、宿に向かいます。
駅からちょっと離れたドーミーに荷物を置いて、タクシーで向かったのは、
丸亀町商店街のほど近くにある「遊」というお店。
暖簾に書かれた心の文字が目印です。
木のカウンターに、ズラっと並ぶいくつもの大皿。
とにかく、旅先ではこんな感じのお店が恋しくなります。
最初に出してもらった枝豆と、ハムとアスパラのマヨネーズサラダ。
地元の採れたてが使われてるからこその、素材の濃さ。
これだけでも、なかなかの満足度。
そこに、地元野菜の揚げ浸しを出されたら嬉しいものです。
目に鮮やかなパプリカやカボチャの甘さに、ミョウガの爽やかな味わい。
グシュっと溢れるナスの旨みにオクラのねばねば感。
色々な形容詞が飛び交う楽しさがたまりません。
で、この手のお店で楽しみなのが、
黒板やホワイトボードに書かれる手書き系メニュー。
背が低い自分はこれを眺めつつ、
イスから身を乗り出して大皿の中身を伺うのですが、
常連さんだったら大体の中身が想像できるに違いないだけに、
さしずめ、最初の1回目はお店との見えない名刺交換なのかもしれません。
さぁ、お刺身の盛り合わせです。
マナガツオ、フグにタコ、そしてハモとか。
オールジャパン的なものではなく、
西ならではのラインナップが、嬉しいものです。
もちろん、柑橘王国たる四国なのでスダチも忘れずに。
タコと野菜の煮物。
さっき揚げ浸しで食べた野菜なのに、
調理法が変われば性格も変わる!といった具合に、
あれよあれよとビールと共になくなってしまいます。
そして、タコの柔らかさ!
スッと噛みきる歯当たり優しい弾力から、
染み込んだ煮汁とタコの旨みを味わうと、
この煮物の半分はきっと人柄でできてるんだろうと、
勝手に思ってしまうものです。
で、鰻巻きを頼んでしまいました。
確か、人生では3回ぐらいしか鰻巻き経験がしかないのですが、
フワフワな出汁玉子の優しさに包まれた鰻がいい感じ。
しかも、隣に添えられているのが、香川の代表的な郷土料理・醤油豆。
これが旅客に対する心遣いなのか、それとも、この組み合わせが日常なのか。
どちらにしても旨いのでそれで大満足。
豪快に揚げてもらったのは、舌平目。
この辺りでは、その姿から「ゲタ」と呼ばれるようですが、
お店の女将さん曰く、場所によっては「クツゾコ」とも呼ばれるらしく、
その話だけで目から鱗がポロポロと。
ざっくりとしかも、大量に食べる印象がなく、
これだけの分量が入るものだろうか…と思っていたものの、
食べ終わってみると、あっさりした魚だけに、このボリュームなんだなと。
この食材を普段使いできるのがうらやましいです。
そろそろ、ご飯ものを…と思っていたところで、
「素麺食べない?」というおかみさんからのお誘い。
もちろん、いただきます。
で、出されたのがこの素麺。
よく見かける細〜いタイプではなく太麺。
製法がとにかく丁寧で、数が少なく貴重なものだということで、
ネギがたっぷり入ったつゆに、どっぷりと浸してズルズルと。
いやぁ…すごいです。
なんか、今までの素麺はなんだったんだろうという感じで。
勢いですするのではなく、弾力をしっかり味わうものなんだと。
こういった出会いに恵まれると、世界が広がります。
締めの第二段は、出たての栗を使った栗ご飯。
ホクホクの栗の香りが、腹十分ぐらいだったはずの胃袋を
再び拡張してくれます。
デザートは、マスカット。
これが鮮烈に甘くさわやかで、
冷蔵庫に常備したいぐらいのものでした。
もう、期待通り。というより期待以上!
旅先で食べたいものの理想像がこのお店には詰まっていて、
しかも、コストパフォーマンス的にも申し分なし。
食後は、このお店のために高松に行きたくなる自分がいました。