夜の帳が降りた福島駅周辺。
この地で一泊するときは、名物ということもあって円盤餃子を食べることが多かったのですが、ある日の晩、福島の仕事でお世話になっている方にご案内いただいたのがこのお店。
店名の「おさい」とは、女将さんのお母様の出身地である山形で、お惣菜やおかずを指す言葉なんだそうです。
カウンター席のみのこじんまりとした店内には、常連さんと思しきお客さんが次々とやってきて、カレーやハンバーグといった夜ごはんのセットメニューに舌鼓を打っています。
そんな姿を見ていると、家庭的な洋食もいいなぁ…と思ったのですが、初めての訪問ということで、おまかせで料理を出してもらいました。
まずは、じゃがいもとひき肉の煮付けに、出汁巻き卵。
一口食べれば丁寧に作られた家庭料理にしか生み出せない、ほっこりとした優しい味わい。おかわりしたくなるお通しってありますよね?まさにあれです。
お次は、大きな鳥のつくね。ど真ん中には黄身がぽこんと盛り上がっています。
折しも、ちょうどこの日はスーパームーン。刻み玉ねぎのシャキシャキした歯ざわりがミックスされたところに、さっぱりした肉汁甘めのタレと黄身のコク絡めつつ、美味しいお月見を楽しませていただきます。
そして、福島ならではのニシンと山椒の組み合わせ。
あっさり味で炊かれた煮物は、ほろっと崩れる身から上品な美味しさが滲み出し、爽快な山椒の香りが包みこみます。これ、箸が止まるタイミングがありません。
そして、タルタルがたっぷりかかった、鮭のムニエル。
パリッと香ばしい身とタルタルの相性バツグンなのはもちろんですが、皮が好きな自分には、ありったけのタルタルを皮で包むように食べる最後の一口に大満足です。
そして、焼きサラダ。福島県産の野菜にこだわっているお店ということもあり、どれもが逞しく瑞々しい美味しさ。
温かくなったことで、甘さや香りといった個性も一層発揮されます。
これだけでもお腹いっぱい大満足だったのですが、どうしても気になった一品が。こんなにも力強くシンプルを謳ったごはんをいただかないわけにはいきません。
ねこまんまの上にたっぷりの海苔が盛られた一品。見た目以上にボリュームがあるのですが、シンプルゆえに箸が止まることはなく、胃袋の先に胃袋が生えてきたかのように、別腹でした。
厚化粧系な外食もいいですが、地の食材を胃袋に寄り添うかような優しい味つけで、家庭の食卓のような雰囲気で食べられるのは、やっぱり嬉しいものです。