富士宮市・第2回B-1グランプリと富士宮やきそばを巡るひる・たびさんぽ(その3)~瓔珞で食べる焼きそば、カレーラーメン、サンマーメン~
ご当地グルメである、富士宮やきそばを出すお店の数は非常に多く、一軒一軒にそのお店ならではの特長がある。
最初に訪問した前島が、スタンダードに鉄板で焼くやきそばであるのに対して、この瓔珞という中華料理店で出される焼きそばは、富士宮やきそばとしては、一味違った作りとなっている。
蛍光灯に照らされた店内は、昭和の香りが残る、というよりは昭和のまま残された造り。席に座って厨房をのぞいてみると、調理しているのはおばさま2名のみ。しかし、客席の数は約40人分。しかも、B-1会場が満員ということもあって満席。
そして、一番驚いたのが、この客席数に対して、ホールの人数がわずか一人だということ。そんなホールの方に申し訳ないような気持ちになりつつも注文したのは、焼きそばとカレーラーメン、そしてサンマーメン。
待つ、待つ。待つ…やはり、このお店の人数だと仕方がないと思いつつ、追加注文したキリンレモンを飲みながら待つこと約1時間。ようやく、焼きそばが運ばれてきた。
ここの焼きそばは、中華料理店なので鉄板ではなく中華鍋で調理されたものが、お皿に盛られて運ばれてくる。なので、鉄板の上で調理され、そのまま口にする焼きそばと比べると、お皿に盛られた焼きそば自身の水分で蒸されるかのごとく、弾力の中にふわっと少し滑らかな食感を伝える作りになっている。
また、使われている具も、キャベツは入っているものの、ニンジンやモヤシなども使われており、スタンダードな富士宮焼きそばとは、ちょっと違った系統になっている。
そして、蒸し麺を延ばすために使っているのが水ではなく、ラーメンのスープなので、ソースが和えてあるものの、どちらかと言えば尖ったソースの味ではなく、スープが馴染んだ味わいが、弾力あるそばから広がっていき、そこにソースの味が足し算として加わるといった流れになる。
次に、カレーラーメンが運ばれてきた。
カレーラーメンにも、カレーソースの下にスープが注がれている2重構造型、少し延ばされたカレーソースのみが入ったもの、スープがカレー仕立てのもという、3種類に分けることができるのだが、ここのは2重構造型。麺を器の下から引き伸ばすと、
こんな具合に麺にしっかりとソースが絡む。この味はマニアックかつ正統派のB型料理。
ズルズルとすするうちに、カレーのしぶきが目立たないところにはねており、それでも食べ進んでしまうという、一種の魔力のようなものを持った味。辛さはあまりなく、ソースとスープのバランスもいい感じで、具の豚肉がカレーラーメンはこうあるべき的な、ジャンクっぽさも感じさせる。
そして、サンマーメンが運ばれてきた。
サンマーメンは、少し甘めに調理された野菜のあんかけが乗ったラーメンのこと。自分も町田にあった中華料理店で、食べたことがあったものの、よくよく考えると大人になってから口にするのはこれが初めて。
ということで、新鮮な気持ちで口にすると、片栗粉によって麺と強く絡んだあんかけの甘さが、野菜の瑞々しさと旨い具合に組み合わさり、不思議な感覚になる。また、あんかけのフタによって、麺の熱が逃げることがないので、一口一口がアツアツの状態で楽しめる。
食べ終わるまでに、入店から約2時間近くかかったものの、不思議なことに食べ終わると、気にならなくなるもので、その代わりに味に対する興味が沸いてくる。そんなお店である。
※残念ながら、2017年に閉店してしまいました。