福島づくしの夕食。
ある日の夕食、食卓には極太の焼そばと
鶏胸肉のグリルが並びました。
この太麺こそ浪江やきそば。
がっしり目のソースが絡んだシャキシャキのモヤシと豚肉、
パワフルな姿からそれ以上にパワフルな味。
ズルズルすすれば瞬時に元気になれちゃいます。
これは、二本松に行かれた方から頂いた、浪江の名店・杉乃家製。
震災の影響を受けて、全域が避難地域となった浪江から移り住み、
営業を再開した飲食店はこの杉乃家さんだけ。
二本松駅前の市民交流センター内に構えるお店で、
以前と同じ箸袋で、変わらぬ故郷の味を提供しています。
そして、鶏胸肉のソテーにも一工夫。
塩麹を揉み込んだお肉が、こんな感じに焼けるのですが、
これは塩麹ではなく…
この、魔法の漬け床・じゃがいも床を揉み込んだものなんです。
漬物床と言えば、糠という言葉が反射的に出てきますが、
じゃがいもをペースト状にした使った漬物床に、
昆布や椎茸といった出汁材を加えて野菜を漬け込めば、
唯一無二の味ができ上がり。まるで、野菜の共和えみたいです。
元々、会津地方の食文化だったものが、
時代を経て県内で食される範囲が広がり、
最近では魚や肉を揉み込む調味料としても、
使われているそうです。
この日は鶏胸肉150グラム程度に対して、
揉み込んだのは小さじ1杯。
焼くと香ばしく甘い香りが立ち上り、
その味は塩麹以上にまろやか。
あっさりした鶏胸肉の味がキリっと引き締まります。
この量でしっかりと味を引き出すのですから、
昔の方の知恵は本当に偉大なものです。
地域の食文化やそれを生み育てた知恵は、
食べるプロセスを経ないと受け継がれません。
今、確かに福島の食材を食べる機会は少ないのですが、
食文化は色々な形で食べ継ぐことができます。
それを放棄するよりは、自分はそれを選びたいと思うのです。
なみえ焼そばで街おこし活動に取り組む、
浪江焼麺太国のキャッチフレーズは、
「何事も馬九行久馬九行九(うまくいく)」。
今だからこそ、この言葉の意味深さを考えずにいられません。