白く覆われた青森の街に降り立つと、
東京の寒さなんて冬のプロローグに過ぎないことを、
吹き込む風が教えてくれます。
確かにそれは痛いんです。
手袋を忘れたり、薄手のマフラーが
使い物にならなかったりしたことに後悔したり。
でも、それ以上に心地佳さを感じるのは、
青森に吹く風は雪のシャワーのようなものだからかもしれません。
この日の宿からタクシーでたどり着いたのは、鈴木やきそば。
周りにお店が豊富にあるエリアではないので、
灯りが見えれば、まるで砂漠のオアシスにたどり着いたような感覚に。
店内に入ってお腹と相談した結果、中盛りを注文。
お店を切り盛りしているおかみさんが、
中華鍋のへりや両手に持った金属ヘラを使って、
他のお客さんの注文や、持ち帰り用の焼そばを、
力と技とで仕上げていきます。
ソースのシャワーを全身に浴びた、もちもちふっくらの茹で麺、
そして大きめのキャベツに豚肉。
一口食べれば止まりません。
アツアツのうちに食べたいという本能もあるのですが、
四角い麺の刺激がリズムのように食欲を刺激するからなんだと思います。
短距離走のように一気に食べ終えて、
ポットから湯飲みに注ぐときに湯気が立っていたお茶は、
既に飲み頃な温度になっていました。
お代を払ってお店の引き戸を開けば、
足下の雪絨毯は厚さを増していました。
でも、一歩一歩踏みしめるふっくらした感触に、
やきそばの食感を重ね合わせつつ、
焼そばを作るおかみさんの背中を思い出せば、
寒さなんて忘れてしまいます。