【やきとり館/秋田県横手市】おばちゃん、熟練の目利きが凝縮したこの串がこんなに安くていいんですか…!?
秋田県横手市で過ごす夜。
ご当地もののごはんとして真っ先に頭に浮かぶのは『横手やきそば』ですが、横手駅周辺をはじめ点々と見かけるのがやきとりのお店。やきそばを扱う居酒屋さんでも一串80円で売られていたりと、生活に近しく飲みの場に欠かせない存在となっています。
そんな横手の中心街から少し外れた場所で、静かに輝く赤ちょうちん。水上精肉店の文字と暖簾に染め抜かれた『館』の文字。今、この暖簾をくぐらないと一生後悔する。心の感じたままにガラス戸を開きます。
中はこじんまりとしたカウンター席とテーブル二脚の畳の座敷。人の気配を感じたからか、「いらっしゃいませ〜」の声とともに奥から出てきたのは年季の入ったおばちゃん。
もともとは市内の飲食店向けに精肉の卸をしていたそうですが、25年ほど前からやきとり屋さんに。今では娘さんと二人で切り盛りされているそうです。
そんなお店のメニューを見れば、やきとりの安さに驚くしかありません。
「ウチのお客さんには合宿免許で横手に来る若い子も多くて、値段は安めに提供しているんですよ〜」と、とりネギの60円から一番値が張る串でも合鴨つくねの100円。しかも14本セットなら驚きの1,000円!
太っ腹とか気前いいとかの言葉を全部出しても足りないぐらい、本当にすごい料金設定です。
串を焼いている間に運ばれてきた2種類のお通し。新鮮なオクラとわかめの和え物と、キムチのタレが隠し味で効いたイカの煮付け。おいしさも量もしっかり詰まった小鉢があれば、外の暑さも手伝って生ビールが進むってもんです。
さぁ、14本盛りの登場です!大きな丸皿に並ぶ姿からは家庭的な装いを感じます。
とりネギ、豚バラ肉、そして暖簾で見て気になっていた牛ネギの3種類。鶏肉はふんわり柔らかく肉汁すっきり。豚バラ肉も玉ねぎがしっかりと脂を吸ってシャキシャキじゅわり。
そして牛ネギはきめ細かい牛肉のミンチの間にネギが挟まれたもの。ハンバーグを軽々と超える柔らかさに驚きを隠せず、どれも抜群の塩加減で肉の味がしっかり引き出されています。
お次は卵焼き。「甘めと塩味、どっちがいいですか?」と尋ねられる一品。自宅で甘めに焼く事が多いので塩味で頼んでみたら、これまた絶妙の塩加減。ふわとろ系ではなくお弁当に入っているような姿だからこそ、余計に嬉しくなります。
そんな卵焼きに舌鼓を打っている間に、またまら焼いてもらいましたよ牛ネギを。これ、本当に癖になるんです。
締めはソースたっぷりの特製やきそば。野菜も麺もたっぷり入ったお皿に横手らしく半熟卵が鎮座。これで驚きの400円。
シャキシャキのキャベツのみずみずしさやソースがしっかり絡んだ豚肉。そして黄身を絡めた焼きそばの麺で胃袋を満たしつつ、「ありえない…!ありえないっ!!」と心で叫ぶしかありませんでした。
夜空に溶け込んだちょうちんの灯りを見ながら、また、おばちゃんの笑顔と年季の入った味に会いたい。店を後にしてすぐ思ったのでした。