【ぬいどう食堂/青森県佐井村】何はなくても、このうに丼と歌舞伎丼を食べて欲しい!!
青森市から、車を走らせること約3時間30分。休憩も取らずに車を走らせて向かうは下北半島。
青森市内や津軽半島の蟹田から、下北半島行きのフェリーが出ているものの、少し涼しげな気温の中をむつ湾沿いに車を走らせていると、少しだけ開けた窓から、左から右へとさわやかな潮の香りが通り過ぎる。
巨大な風力発電用の風車や自衛隊を横目に、2時間30分ほど走ると車はむつ湾から離れ、一気に山道へ突入する。運転する自分が酔ってしまいかねないぐらい、アップダウンも右往左往も厳しい道のりを超えたところで、右手に一軒の食堂が見える。
店から見える「縫道石山」という山にちなんで名付けられた、そのお店はぬいどう食堂。
壁には手書きのペイントで丼物のラインナップが描かれている。ここに来るために、一杯のコーヒーとアミノ酸の錠剤2粒でやりすごしていた自分には、どれもこれもが魅力的だ。
ガラスの開き戸を右に動かし、店内に入ると二人のおかみさんが「いらっしゃいませ」と、暖かい声で出迎えてくれる。いつも聞いている言葉なのに、不思議なほど違って聞こえた。
お店の奥にある座敷に靴を脱いであがり、テーブル席に腰を下ろしたら、今一度だけ店内のメニューを確かめる。でも、初めから注文したいものは決まっていた。8月一杯までにしかお目にかかれない一品に決めていた。
だからすぐさま、おかみさんにうに丼を注文した。
丁度、テレビではオリンピック中継の真っ最中。1時間の時差越しに野球を映し出す画面を見ながら厨房の様子を見る。そんな妙な動きにしか見えない自分の元に、うに丼が運ばれてきた。
直径約15センチの丼一杯に、なみなみと盛られた大量のウニ。小ぶりのウニを使っているので、その数はおそらく数十個分。
まるで、カレーライスを食べるかのように食べる。食べる。でも、ウニはまだまだたっぷり。泣けるぐらいに濃厚なウニの味をご飯が受け止めきれない。自分もこのウニの旨さを受け止めきれない。贅沢を通り越して、罪悪感に包まれるぐらいのボリューム。
でも、やっぱり心は正直だ。旨い、最高。
正直、頭はまだ運転のダメージでぼーっとふらつき気味なのに、箸は止まらず、地魚の刺身ももずくも煮魚も、貝の旨みが染み渡る味噌汁も一気に姿を消した。
食べ終わった。ごちそうさま。でもこれは朝ごはんの分。間を開けずにお昼ごはんとして歌舞伎丼をおかわり。
さぁ、今度はイカだ、イクラだ、アワビもいるしウニだって東京的に考えたら、これで十分なぐらいの量だ。
そんな贅沢な彩りに覆われた丼ゆえに、食べる順番に悩む。イカに醤油をつけて甘さにうれしくなり、アワビのコリコリした食感に期待は満たされ、イクラの味加減が自分のフェイバリットな味と同じで、最後に再びウニに溺れる。
あぁ…帰りたくない。でも、また来ればいいんだ。またここでウニを口いっぱい頬張ろう。
そして数年後。この感動を味わうために、再び車を走らせて来てしまいました…!