【菊原キッチンカロリー/福島県福島市】白いごはんが止まらないカロリー焼きと謎の「肉取合せ」

13/08/2020福島,東北,洋食,よるどき

古関裕而記念館の外観

朝ドラ「エール」をきっかけに、古関裕而のまちとしてプロモーションを展開中の福島市。自分も街なかの古関裕而ストリートを歩きつつ写真やパネル展を見て、オジマパンで休憩していたら「総本山に行かければ!」と、勝手ながらな使命感が芽生えるものです。

古関裕而記念館で、あの名曲が生まれた背景に触れる!

福島駅からタクシーで約10分、徒歩なら中心街から2.5キロほど。国道4号線から信夫山に一本入った先に、福島が生んだ稀代の作曲家・古関裕而記念館があります。

古関裕而記念館の入口

1989年に80年の生涯を閉じる前年に開館。エールのパネルが飾られた入口から館内に入ります(入館時には手のアルコール消毒もお忘れなく)。

古関裕而記念館のホール

胸像が出迎える先では、エールの特設パネル展が開催中。

古関裕而記念館のハモンドオルガン

その一角に飾られた一台のハモンドオルガン。昭和22年から40年間にわたって、NHKのラジオドラマを彩った楽曲は、古関裕而の手によってこれで奏でられたもの。丁寧な手入れで鍵盤も輝きに包まれています。

二階は古関裕而の歩みを伝える展示スペース(撮影は禁止されています)。「古関裕而スポーツ曲メドレー」として紺碧の空や六甲おろし、スポーツショー行進曲、栄冠は君に輝くなど、日本スポーツ界に欠かせない名曲が流れる中、年表や自筆の譜面をじっくり見学。愛用のメトロノームやストップウォッチ、8ミリ撮影機などは、アンティークアイテムとしてみても面白いものばかり。

また、古関裕而と金子夫妻のドラマ展として、二人の歩みを記した年表も展示中でしたが、特に興味深かったのが昭和25年から35年まで作曲を続けた自宅二階の書斎を再現、楽想が練られた和室の様子が細かく紹介されています。

また、大正後期の福島市街図をここに車で車で走ってきた道路とシンクロさせると、現在も営みを続けるお店の名前もあって面白いところ。正直、まさかここまで惹かれるとは思いませんでしたが、今も身近な存在として耳に触れる音楽を生み出した方の展示は、とても素敵なものでした。

音楽のように優しく寄り添ってくれそうな「街の洋食屋さん」。でも、その名前に驚きです。

菊原キッチンカロリーの外観

頭の中でスポーツショー行進曲がリフレインする勢いのまま、古関裕而記念館から歩いて戻ってきた県庁通り。さすがにマスクしながらの2.5キロはなかなかでしたが、テルサ通り・並木通りとの交差点に掲げられた黄色の布看板を見ると元気が出ます。

街の洋食屋さんと描かれたインパクトは絶大で、間違いなく昔からこの界隈をおいしさで幸せにしてきた証。しかも、その名前にはキッチンカロリーの文字があるのですから。

学生街の御茶ノ水で1954年に創業したキッチンカロリー、その名物といえばカロリー焼き。かくゆう自分も夜学に通っていたころにお世話になった頼もしき存在。熱々の黒い鉄板皿に盛られたお肉と白パスタの組み合わせは、空腹を一気呵成に満たしてくれました。

菊原キッチンカロリーの料理サンプルケース

同じ店名ですから「カロリー焼きもあるのかなぁ…」と思いつつサンプルケースとご対面。そこには時空を超えて愛される魅惑の昭和洋食がズラリ。お子様ランチとか洋食弁当とかの、ちょっと変化球っぽい料理が気になりつつ、ここにはカロリー焼は見当たりませんでした。

菊原キッチンカロリーの店内に向かう階段

それでも足の勢いは止まらず、お店がある地下1階に。「楽しい雰囲気!! 貴方のカロリー」と言われたらそれを感じずに建物の外に出る理由はありません。

菊原キッチンカロリーの内観

白いビニールテーブルクロスがかけられたテーブル席が出迎える店内。壁の灯りもまた味わい深いポイントです。

菊原キッチンカロリーのメニュー

で、メニューを見ると…始めてここに来て迷わずに料理が決まる人がいたら、本当に尊敬しちゃいます。名が体を表す料理から「ラブリー」「オードブル取合せ」「アパッチライス」と、思わず笑顔がこぼれるネーミングの料理までズラリ。

「これ!これ!!」と心の中で歓喜の声が出るカロリー焼

菊原キッチンカロリーのカロリー焼

それでもやっぱりカロリー焼きの文字があれば、最初はこれでいくしかないでしょう!鉄板から油が元気よく跳ねるほどの熱々仕立てで登場。

醤油タレの心地よい塩加減がまとめる牛バラ肉の香りとエキス、飴色になった玉ねぎの甘さとシャキシャキの食感。時間が経つに連れて牛脂の甘さが溶け込んだ炒め油をたっぷり吸って、旨さの塊になった白いスパゲティ。

「牛肉の旨さを玉ねぎとスパゲティにもシェアした、醤油タレがビシッと効いた料理」として直向きにうまいからこそ、ごはんと一緒に徹底的に頬張るだけ。炭水化物で炭水化物を食べる感覚が背徳感もあって夢中にさせます。もちろん、あっというまに完食。

謎のメニュー「肉取合せ」とは?

ということでその数日後も足は地下の洋食空間に。気になっていた「肉取合せ」を注文しようと尋ねてみると、「豚、鳥、ハンバーグ、ハム、ベーコンのグリルに、ドミグラスをかけたものなのよ~」とシェフの奥様が教えてくれました。

菊原キッチンカロリーの肉取合せ

これはもう、お肉様ランチですね。昔ながらの洋食屋さんなハンバーグに、赤ハムと赤いウインナーのコンビ、そしてポークソテーとチキンソテー。いい茶色してます。

どこか懐かしいドミグラスソースをまとったお肉のおかずたちですが、胸肉のチキンソテーはさっぱり担当、ハンバーグはごはん一粒一粒の隅々まで入りこむ担当といった具合に、一つ一つに濃淡やごはんと向き合う役割を引き受けます。もちろんパスタは「結局、全部の味を吸ってうまくなっちゃった」担当です。

この豪華な鉄板についてくるコーンスープも、滑らかで後味もすっきり。粒もしっかり入っています。半分ぐらい柔らかくなったクルトンが、ちょっといいアクセントです。

ということで、こちらも冷める隙なくあっという間に完食。もうお腹いっぱいです。

そういえばと、お会計の際に御茶ノ水との関係を尋ねてみると、「ウチの店は御茶ノ水のキッチンカロリーと出自は同じで、東京オリンピックの時までは支店扱いだったけど、その後は独立して店をやってるのよ」と、頭のモヤモヤが晴れる一発回答。これは色々なメニューを食べに来なければと、勝手に決意を新たにしたのでした。

菊原キッチンカロリーの外観(夜景)

この店が入っているビルも含めて、リノベーションされたお店も多い界隈ですが、この愛されてきた味だけは時代の変化という言葉に譲っちゃいけないところ。だって普遍の存在なんですから。いつまでも黄色い布看板に街を見守ってほしいものです。

この記事を書いた人

takapu

ローカルフードデザイナー/伝承料理研究家/Local-Fooddesign代表。食にまつわるテーマを中心に、新商品・サービスの開発とリニューアル、プロモーション・コンテンツの企画制作。各種編集、取材、撮影、執筆、講演をワンストップで手がけています。サービス内容はこちら。>>Local-Fooddesign